もしも悠仁さまに男子がなければ
旧宮家と女系継承を両方視野に入れるべき

 日本国憲法では、「象徴天皇制」を採用しているが、その具体的運用についてはあまり議論されてこなかった。英国では、国王は首相に自由に意見を述べ、首相がそれを忖度することもある。ただし、国王自身が「自分の意見」として公表したり、首相が「国王の意向だ」というのはタブーだ。

 ところが、日本では陛下と首相の会話は少なく、宮内庁長官を通しての間接的会話がほとんどだ。そのなかで、先の陛下がご退位の希望を国民に直接、語られたのは憲政の異常事態だった。

 幸い、陛下と安倍晋三首相(当時)が丁寧に話し合われて、一回限りの特別措置という形で穏当な皇室典範改正が実現したが、象徴天皇制のあり方について課題を残した。戦前の天皇と首相はもっと会話があった。現状は問題ではないだろうか。

 皇位継承問題は、小泉内閣で男女区別なく女系継承や女帝を認める方向が模索されたが、悠仁さまが誕生し、議論は棚上げになった。

 だが、ご退位についての皇室典範改正の際の国会付帯決議で、有識者会議が設けられた。その報告が2021年にされ、(1)悠仁さままでの皇位継承はそのまま、(2)悠仁さまに男子の継承者がいない場合の扱いは将来議論する、(3)皇族の数を確保するため、皇族が旧宮家の男子を養子にすることを認め、女性皇族が結婚後も希望するなら本人だけ皇室にとどまることを認めるなどの提案がされた。

 現在の制度の下で皇位継承者がおり、すでに16歳になっているときに、その順位を変更するのは欧州でもまったく例がない。ただ、もしも悠仁さまに男子がなければ、旧宮家と女系継承と両方とも視野に入れるべきである。

 その理由は単純だ。いわゆる女系論というのは、実質的には、上皇陛下の4人の孫(眞子さんを含む)に皇位継承を限定し、旧宮家を排除する意図で始まったのだが、4人の方の子孫が何世代かのうちに誰もいなくなる確率は低くなく、そのときになって旧宮家を復帰させるのは難しい。

 一方、旧宮家でも、男系男子の継承者が絶える可能性はある。ちなみに英国は5000人も有資格者がいるが、少なくとも100人くらいは欲しいから、旧宮家など少し遠い親戚の男系男子(旧宮家以外にもいる)と女系と両方視野にいれたほうがいいと思うのだ。

 旧宮家(11家)は、男系では現皇室から遠いのだが、そのうち4つの家は明治天皇の女系子孫で、特に東久邇宮家は昭和天皇の長女成子さまの子孫でもある。

「民間人として暮らしてきた人を天皇にするのか」という人もいるが、継承があるとしたら、悠仁さまの後の話で、悠仁さまと同世代が皇族の養子になっても、その子どもとか孫が候補だから、彼らは生まれながらの皇族だ。

 また、愛子さまや佳子さまが皇室に残られたとしても、皇位継承があり得るのは、本人でなくその子孫だ。

 なお、悠仁さまが上皇陛下の天皇退位の年齢になられるのは約70年先のことだから、いまの各皇族や旧宮家の好感度など何の意味もなく、両方の可能性を残しておいて、必要な状況があれば、21世紀後半になって、将来の世代が決めればいいことではないだろうか。