中学校の校門の前に、
桃の瓶詰やタピオカミルクティーが並んだ

 こうした動画が拡散されている中、34中学校に多くの人たちが駆けつけた。校門の前に集まった人々の手には、花、桃の瓶詰、タピオカミルクティーがあった。やがて校門の周辺一面が、彼らが捧げた花と桃の瓶詰で埋め尽くされ、まるで果てのない海のようになった。みんな、涙を流しながら、「天国には苦痛がないから、安らかに眠ってください」と祈り、「天国で仲良くしてください。コーチ、子どもたちで手を取り合って、あの世でもバレーボールを続けてください」などと話していた。

 集まった人たちが、花や桃、タピオカミルクティーを持ってきたのには理由がある。中国の東北地方には、子どもが風邪をひくと、缶詰の桃を食べさせる習慣がある。桃を食べると早く治るという説があること、また、「ふるさとの味を忘れないで」という意味も込められている。また中国語の「桃」と「逃」の発音が同じであるため、“災害から無事に逃げる”という意味もあるそうだ。

 タピオカミルクティーは、女子学生たちの生前の大好物だった。しかしスポーツをやっている彼女たちは、体重を維持するため、いつも我慢して飲まないようにしていたのだそうだ。

桃の瓶詰のフタが
開いていた理由

 花や桃、生徒たちが生前好きだった食べ物が、地元のチチハルにとどまらず、全国各地から次々と届けられるようになった。遠方にいる人たちがネットで注文し、日本でいうUberEatsのようなデリバリーの配達員に届けてもらったのだという。一時は、品切れ状態になるほどだった。

 注目すべきは、桃の瓶詰はフタが開けてある状態だったことだ。

 通常、これらのデリバリー配達員は一刻一秒を争い、電動スクーターを疾走させて荷物や食べ物を配達している。なぜなら、予定の配達時間に遅れたら、配達料の半分以上を引かれたり、お客さんの評価が悪くなって罰金を科されたりするためだ。

 できるだけ多くの注文を受けられるよう、配達員たちはいつも時間と勝負しているのだから、本来なら頼まれた荷物を置いてそのまま去っていけばいいはずだ。ところが今回、彼らは大事な時間を使って、一つ一つ瓶のフタを開け、ミルクティーにはストローを挿し続けたという。誰に頼まれたわけでもなく、彼らは、一人の人間として最大限の同情と悲しみを心に込め、自主的にこのような行動を取っていたのだ。