わが子の安否を確認できず、
何の説明もないまま放置される保護者たち

 それは、午後4時ごろ、病院に駆けつけた保護者たちが子どもたちの安否を確認しようとしている様子の動画だった。保護者たちは、病院の廊下で立ちっ放しのまま、政府や学校、病院側の誰一人からも説明を受けることなく6時間以上の時が流れていた。今、自分の子どもがどんな状況にあるのか、生きているのか、あるいはすでに亡くなっているのかすら教えてもらえない状態だったのだ。他に来たのは警察だけだった。

 保護者たちの憔悴した顔や途方に暮れた様子、そして、なんとか冷静さを保ちながら警察とやりとりをする動画は、「目を疑う」「信じられない光景」といったコメントとともに瞬く間に拡散していったのだ。

 動画の中で、一人の中年男性が「今一体どんな状況なのか、救助がどのように進んでいるのか、誰か教えてもらえませんか。どうして一言の説明もないまま、こんなに長く無視されているのか?心配しているんだよ!家には年寄りもいる。(どう伝えるか)心の準備をさせる必要があるんだ」と訴えた。また、母親とみられる女性は「とにかく子どもに会わせて!確認させてください。もしかして、うちの子じゃないかもしれない。会ってみないと分からないじゃないですか」と叫ぶ。

 子どもたちが生きているのか亡くなっているのかも知らせずに保護者たちを廊下に待たせている間、政府や学校関係者は何時間もかけて方針を協議していた。その日の深夜になってようやく「子どもに会いたいのであればここにサインを」と、さまざまな条件付きの承諾書が保護者たちに手渡された。これは、サインをしなければ子どもの安否を確認することもできないということである。「遺体を人質にしているようなものじゃないか」「いつもの隠ぺい体質だ!」と、それを聞いた人たちは憤慨した。

やっと安否が知らされたのは
事故の翌日

 事故から一夜が明けた翌日、市政府は記者会見を開き、謝罪した。ネットでは、「いつもの聞き慣れた言葉だ。心がこもってない」と厳しい指摘が飛び交った。

「子どもが亡くなった、もう二度と家に帰ってくることはない」という事実を知らされた保護者たちは、張り詰めた心の糸が切れ、悲しみが波のように襲ってきた。校門の前に、一人の母親がひざまずき、「お母さんが悪かった、許してね。バレーボールなんかやらせなければよかった」と何度も同じ言葉を繰り返した。もう一人の母親は「活1秒都是痛苦!(人生の一秒一秒が苦痛だ、もう生きていたくない)」と泣き叫んでいた。こうした保護者たちの悲痛な泣き声、自分を責める声の動画は、SNSで中国全土に広がった。動画の再生数は億単位となり、それを見た人々は涙した。

 亡くなった生徒たちの名前はしばらく正式には公表されなかったため、ネット民が自力で調べて、犠牲になった11人の名前と生前の写真がSNSで拡散された。写真の中の女の子たちはみんな、明るくてキラキラしていた。