音喜多駿政調会長の下で今夏開催された「マニフェスト・ブートキャンプ」という勉強会では、経済、社会保障、安全保障など402項目の政策を総点検。自民党との対立軸となる「改革路線」の目玉政策を探った。
「第2自民党」と言ったり、自民党との違いを探そうとしたり、維新幹部の言動は右に左に揺れて迷っているようだ。
迷走する野党が気付いていない
対立軸の“古さ”とは?
立民・維新の迷走の背景には、一つの共通点がある。それは「右派VS左派」「保守VS革新(リベラル)」という対立軸の“古さ”に気付いていないということだ。
本連載で何度も指摘してきたが、そもそも安倍晋三政権以降の自民党は「左傾化」している。本来であれば左派野党が取り組むべき政策を次々と実行し、立民や共産党など左派野党をのみ込んできた。
「全世代への社会保障」「子育て支援」「女性の社会進出の支援」「教育無償化」、そして「新しい資本主義」――。
いわば自民党は、所得の格差を是正し、全国民の生活を安定させるための「社会民主主義的政策」を次々と打ち出してきた。こうなっては、左派野党はお株を奪われたも同然である。左派野党はいまや、自民党の「補完勢力」になり下がっているというのが筆者の考えだ(第333回・p2)。
では、その状況下における「新しい対立軸」が何かというと、「デジタル・イノベーション党VS社会安定党」である(第294回)。いずれも筆者の造語なので順に解説していこう。
デジタル・イノベーション党はもはや政党ではなく、「市場での競争に勝ち抜いて富を得ようとする人たちの集団」である。具体的には、SNSで活動する個人、起業家、スタートアップ企業やIT企業のメンバーなどだ。
彼らは政治への関心が薄い。「勝ち組」を目指す人たちにとって、社会民主主義的な「格差是正」「富の再分配」は逆効果になるからだ。
彼らの関心事は、日本のデジタル化やスーパー・グローバリゼーション(第249回・p2)を進めることである。
そして彼らは、政治を動かす必要があると判断すれば、現政権を批判する政党を時と場合に応じて支持する。その支持政党が「野党」となる。