維新が「政権政党」に
成長するための道とは?

 その一つが、自民党の中央集権体制に代わる「地方分権体制」である。維新の会は「道州制」を打ち出してきたが、それをより具体的かつ詳細な国家戦略として練り上げ、国民に提示するのだ(第209回・p3)。

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 それは単に、国から地方への権限移譲を進めるだけでない。これからの時代は、地域同士が国境を越えて直接結び付き、経済圏を築く「コンパクト・デモクラシー」が当たり前になっていく。その動きを加速させるのだ(第204回)。

 例えば、関西・九州・四国などの地方都市に経済特区を設け、外資を呼び込み利益を上げる。日本の各都市が、シンガポール・香港・上海といった成長著しい国や地域と直接結び付けば、経済成長のスピードは加速するはずだ。

 また、あくまで昨今のロシア情勢を度外視した仮説だが、北海道が将来的に、サハリン・シベリアと石油・天然ガスの取引を直接行っても面白いかもしれない。

 その実現可能性はさておき、現在の日本では当たり前の「中央政府が地方を規制で縛り付け、全てが首都に集中する経済システム」に疑念を呈する活動を、もっと大々的に行ってもよいのではないか。

 また、中央政府についても、従来筆者が主張している「参院を改革し、知事・市長や地方議会の代表が直接国会議員になれる連邦国家型上院の導入」(第69回)という統治機構改革を打ち出せば、憲法改正に関する維新独自の「目玉」を作れる。

 17年の総選挙で、維新の代表は松井一郎大阪府知事(当時)、希望の党の代表は小池東京都知事だった。国政政党の代表が国会議員ではなかったというのは、いささか異常な状況だが、この改革が実現すれば解消できる。そして今以上に、地方の意思を国会の決定に反映しやすくなるだろう。

 維新に関しては、一つ一つの政策をボトムアップ式に見直しつつ、国家のグランドデザインに丁寧に落とし込んでいけば、国民に訴えるべき政策がおのずと見えてくるはずだ。そこに、維新が政権政党に成長する道があると筆者は考える。