【適地調査 データずさん 地上イージス配備 防衛省、代替地検討で】
 イージス・アショア(地上イージス)の配備候補地を巡り防衛省が先月公表した「適地調査」の報告書に、代替地の検討に関連して事実と異なるずさんなデータが記載されていることが4日、秋田魁新報社の調べで分かった。電波を遮る障害になるとするデータを過大に記し、配備に適さない理由にしていた。……

 この記事によると、地上イージスの「落選」候補地の1つは秋田県男鹿市だった。防衛省の説明では山が15度の高さでそびえ立ち、レーダーをさえぎることになっていたのに、本当は山の角度は4度にすぎないという。わざとうその数字を作ったのか、何らかの計算ミスかはなんともいえないが、わざとなら社会の「運営側」である市民を政府がだましたことになるし、ミスなら異常にお粗末だ。

疑問が湧いて現地で調査
山の角度の数値が一致しない

 一方、新聞記者の側はどうやってこんなことをつかんだのか。このニュースを報道した秋田魁新報記者の松川敦志に聞いてみた。松川にとっても、読売新聞がその1年半前に「秋田に地上イージス配備へ」のニュースを報じたのが始まりで、イージス配備の背景を調べ始めたという。

「いろいろ調べていくと、いやこれはちょっと、なかなかなものを地元に作ろうとしているぞ、という感覚で。しっかりやらなきゃいけないなと思ったんです」

 松川は前職の朝日新聞記者時代に沖縄勤務の経験があり、日米の安全保障問題にも詳しい。アメリカ連邦議会の議事録やCSIS(戦略国際問題研究所)の報告書を読みこなす。それとともに、地元の政治家、首長たちの動きも追った。

 2019年5月27日、問題の報告書が公表された。100ページを超すこの資料は、秋田市新屋演習場に決めた理由を説明している。松川が気になったのは、秋田市新屋演習場しかないと詳しく説明する章だった。松川は妙に気になり「やっちゃってるんじゃないか」と疑った。

「ほかの候補地を19カ所挙げて、ほかに(地上イージスを)置けそうなところはこの通りないから、もうここ(秋田市新屋演習場)にやるしかないんだというストーリーを組み立てているんですが、あんな住宅地に近いところが唯一クリアしていてほかは駄目なんてことはあり得ない」

 実際、秋田市新屋演習場は住宅地ばかりか、小学校、中学校、高校とも数100メートルの距離にある。なのに、ほかに条件の良い候補地はない、と言われると首をひねりたくなる。