社員アンケートでわかった「テレワーク」のデメリット

 これら3点のデメリットを考えると、社員教育上はテレワークをさせない方がよいと言えるのは明白です。

 どんな仕事でもプロセスが正しければ、成果は必ず出ます。社員教育も同じです。「部下を一人前のビジネスパーソンにする」という成果を出すには、「問題点を気づいたその場で指摘し、正しいやり方を指導する」というプロセスを踏まねばなりません。はたしてテレワークでそれが可能でしょうか。私にはとてもそうとは思えないのです。

 私の経営する会社でテレワークを実施している最中に、社員にアンケートを実施したところ、こんな意見が多く見受けられました。

「通勤時間がなくなる、化粧の時間が短くなる、服装に気を遣わなくてよくなるなど、テレワークには確かに大きなメリットがあると思います。しかし、仕事とプライベートの空間が同じことで、その境界があいまいになり、家事などの私用につい手を出してしまうことがあります。このままテレワークを継続していると、自分をきっちり律することができず、怠惰になってしまうのではないかと不安です」

 人は易きに流れてしまうものです。上司の目がなければ、サボり癖がついてしまうのは当たり前なのです。

 現に、イーロン・マスク氏は、在宅勤務は生産性を低下させるうえに、その選択肢を持たない工場労働者らにとって不公平だと主張し、自身の経営するテスラ社とTwitter社で全社員に対して出社するように厳命したのは有名な話です。同様に、Google社やApple社でもテレワークを縮小する動きがみられ、日本でも楽天グループや本田技研工業など多くの企業がテレワークから出社勤務に切り替えました。

 テレワークだけでなく、働き方改革やワーク・ライフ・バランスといったものも同じです。メディアやSNSの声に感化され、本来あるべき姿を見失ったら本末転倒です。リーダーであれば、何よりも会社の利益と部下の成長を優先しなくてはいけません。それらに悪影響をおよぼしかねないものについては、例え世界でもてはやされていても、注意深く検討できる冷静さを持つようにしましょう。