「おじさん・おばさん」が大活躍!?
世代間ギャップを埋めるサントリーの試み
企業のダイバーシティ推進は、確かに世界的な大きなテーマだ。企業や組織は、ダイバーシティが当然のものとなるように努力をする必要があるだろう。だが、ジェンダーや国籍よりももっと身近な、どの会社でも課題になり得るダイバーシティ問題がある。「年代」である。
年代が違えば、仕事に対する取り組み方やキャリアに対する考え方は大きく異なる。特に昭和の時代は、新卒入社した会社で定年退職まで働くことが一般的だった。長時間労働も当たり前で、「根性」で激務を乗り切る人も多かった。そのため、特にZ世代とバブル世代では、やはり価値観に違いがあることは否めない。
本書では、そうした世代間ギャップを解消するための、一風変わったコミュニケーションの事例を紹介している。サントリーホールディングス(HD)の傘下企業が取り組んでいる「TOO活動」だ。
「TOO」のアルファベット3文字は何を略したものか。日本語だ。「隣のおせっかいおじさん・おばさん」である。会社から「おせっかい」の役割を担うよう仰せつかったシニア社員たちを正式にこう呼ぶのだ。
野村さんが取材した2021年の時点で、グループ全体で全国約20人がTOOに任命されている。支店長や部長などを経験した元役職者のシニアらが中心だ。専業ではないが、業務の約4割がTOOに充てられているという。
TOOの人たちが行う「おせっかい」とは何か。要は「職場のみんなの相談相手」だ。社内コミュニケーションの達人として、さまざまな相談事を聞くのが、彼・彼女らの役割だ。相談に乗って、助言はするが表立って問題解決に乗り出すことはない。それは直属の上司などの役割だ。上司と部下のラインの横から介入すれば、組織は混乱し、禍根を残すことにもなりかねない。
だからこそ、あくまで「ちょっとおせっかい」を焼く「おじさん・おばさん」なのだ。管理職の中には、多忙なあまり部下一人一人と対話の時間を持てない人がいるかもしれない。とりわけ世代や性別の違う部下ときちんと向き合うには、スキルだけでなく手間や時間も必要だ。