「コロナ禍を機にネットを使う人が増えただけでなく、就活の情報源がネットに偏ったことも原因のひとつと考えています。コロナ禍以前の学生は、ネットだけでなく、友人との会話や大学のキャリア支援センター、サークルなどの人間関係を通して就活の情報を得る学生が多くいました。しかし、緊急事態宣言によって大学は閉鎖され、バイト先も営業停止。多くの学生が“孤独”になり、就活のリアルな口コミ情報が入りにくい状況に陥ってしまったのです」

 学生同士の会話でも「あのセミナーは高額契約を迫られるらしい」といった注意喚起に近い情報も、口コミで伝わってくる。だが、コロナ禍ではそのルートが遮断されたことで、以前は回避できていたオンライン経由の契約トラブルが増えているのでは、と石渡氏。

「ネットサービスの多くでは、ユーザーの検索履歴やクリック履歴を分析し、学習して利用者が好む情報をSNSやネット広告に優先的に表示します。なので、就活生のスマホは『就活塾』や『就活の無料オンラインセミナー』などの情報が表示されやすい状態です。そのなかに、トラブルにつながる事業者が紛れても不思議はありません」

受け身の就活生は
契約トラブルに陥りやすい

 石渡氏は、「契約トラブルに陥りやすい学生は、受け身の就活をしている傾向がある」と話す。

「消費生活センターに寄せられた相談内容を見ると、SNSに表示された『就活塾』の広告からの応募や、SNSのアカウントに送られてきたメッセージをきっかけにトラブルに発展しています。それぞれの相談者に共通するのは、待ちの姿勢で就活をしている点。受け身の就活生は押しに弱く、Web会議で高額な契約を迫られると、断りきれないタイプが多いですね」

 カウンセリングを受けた学生は「エントリーシートを無料で添削してもらったから」「就活の悩みを聞いてくれたから」という理由で、面談相手に対して恩義を感じてしまう。そのため、不安を感じても接続を切るという決断ができないのだ。

「カウンセリング中に契約トラブルになりそうなときは、迷わず接続を切る。あるいは『親に相談したい』『今から親を呼んでくる』と伝え、それ以上話を進めないようにしてください。もし、SNS経由で無料カウンセリングを受けたい場合は、可能な限り自分の情報を相手に開示しないように心がけましょう。本名はもちろん、できれば大学名や電話番号も明かさないのがベターです」

 それでも押し切られて、契約をしてしまった場合には、すぐに最寄りの消費生活センターや消費者ホットライン(188)に相談しよう。

 まれに、ネットやSNSには善意でエントリーシートの添削を無料で行っている人も存在するが、そうした人物に確実にたどり着くすべはない。契約トラブルを未然に回避するなら、見ず知らずの相手との交流を控えるのが得策だ。

「実は私もエントリーシートの添削を無料で受け付けているので、“怪しい”と感じてる就活生もいるかもしれません。ただ、私の場合は自分から学生にアプローチはしませんし、エントリーシートの添削を通して学生の取材をするのが主たる目的です。なので、添削を行う際は、私の目的が取材にあることや、添削したエントリーシートを私の著作で使用する可能性がある旨も伝えて承諾を得ています。私にもメリットがある形で実施しているので、無料とはいえ対価として情報はいただいているんです」