若手社員との距離の取り方がわからない。コロナ禍以降、リモートワークの機会も増えた。どのように指導をすればいいか困惑している管理職も多いだろう。
そこで参考になるのが、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。優秀なビジネスパーソンに共通する思考アルゴリズムが、見事に解説されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏。ベストセラーとなっている本書は、多くの経営者やビジネスパーソンから評判の一冊だ。
そこで、本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回、本書を読み解くのは、企業現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント・横山信弘氏だ。最新刊『キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ』や衝撃のデビュー作『絶対達成する部下の育て方』などのベストセラー作家でもある横山氏は、『時間最短化、成果最大化の法則』をどう読み解いたのか。連載最終回となる10回目は、「若手社員に信頼される管理職の特徴」をテーマに話を聞いた。(構成・川代紗生)

上司 部下 話すPhoto: Adobe Stock

「もっと成長したい若手社員」と「強く言えない管理職」

──「若手社員との距離の取り方がわからない」という声を耳にします。コロナ禍以降、リモートワークの機会が増えたこともあり、どのように指導をすればいいか困惑している管理職も多いと思いますが……。

横山信弘(以下、横山):最近、仕事で20代前半の方とお話しする機会が増えたのですが、彼らも、「世の中のおじさんとどう付き合ったらいいかわからない」という悩みを抱えていました。

──えー! そうなんですか。

横山:腰が引けてしまう管理職も多いのでしょうね。

 やんわりとしか言えなかったり、指導も曖昧になってしまったり……。

 Z世代は、社会課題の解決などに、強い興味がある人が多い。もっと社会をよくしていきたい。社会に貢献したい。そのために、もっと自分も成長したい。そういう意思があるのに、「若い子が辞めちゃうのでは……と怖くて何も言えない」と勝手に先入観を持って判断してしまってはもったいないですよね。

「ダメ出し上司」より「一緒に悩む上司」

──世の中に「若い人ってメンタル弱いよね」という風潮が漂っているので、それもあって、どう動いていいかわからなくなっている管理職もいる気がします。

横山:単純に「厳しくしなければいい」ということではなく、育て方を現代のやり方にアップデートしていかないといけません。

 私と同世代からちょっと下、つまり今の40~50代が若手社員の頃は、「とりあえずやらせてみて、ダメ出しして教える」というやり方が当たり前でした。

「黙って俺の言う通りにやれよ、そうすればうまくいくから」と。

 でも今は、不確実で曖昧なVUCAの時代。先行き不透明で、「こうすれば必ずうまくいく」という絶対的な正解は存在しません。

 だから、「互いに育つ」というスタンスでコミュニケーションを取るのがいいと思います。「いいから黙ってやれ」ではなく、「一緒に成長していこう」。

「こうしたらいいですかね?」と部下に相談されたら、「うーん」と一緒に頭を悩ませ、「昔はこういうやり方が有効だったけど、今は○○というのはどうだろう?」と提案するくらいがちょうどいいのかもしれません。

部下に「わからない」と正直に言えるか?

──たしかに、昔の成功例がどんどん通用しなくなってきている気がします。

横山:上司も誰も、何が正解かわからない。答えのない問いを立て続けなくてはならない。

 その「問い」を投げかけ合うのが、今の時代の「対話」のやり方なのだと思います。

 正解がないものを、いかに一緒に見つけていけるか。

 若手社員に「ここ、どうしたらいいか教えてください」と聞かれたら、「俺もわかんないんだよな」と正直に言うべきだと思うのです。

 上司自身も答えはわからないのに、わからないことがバレたくないから、誤魔化すように「まずは自分で考えろ」「とりあえずやれ」と言ってしまうのは避けたほうがいいでしょう。

 部下が自分なりに一生懸命やってみて失敗したときに、「ああすればよかったのに」と一方的にダメ出しするのは最低です。こんな上司には絶対ついていきたいとは思えないでしょう。

時間最短化、成果最大化の法則』の「常に最新アプリをインストールする『武器入れ替えの法則』」という項目には、こんなことが書かれています。

 目の前の仕事だけやっていると、目標達成する新しい方法が次々生まれていることに気づかない。気をつけるべきなのは、既存の戦略や戦術が日々古くなっているかもしれないということだ。(P.125)

「俺もわからないんだ」と正直に伝えられて、「だから、一緒に勉強しよう」と寄り添ってくれる人。そういう態度こそ、若手社員にも信頼してもらえる管理職の姿ではないでしょうか。

「若手社員にナメられる管理職」の口グセ・ワースト1
横山信弘
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。