職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
「さん付け」できてますか?
企業を訪れると、「社員の呼び方」によって、その組織の風土が伝わってきます。
これは私が、40代後半の社長と20代の担当者の3人で打ち合わせをしていたときのことです。
終始にこやかに話す社長と、求められると臆することなく意見を述べる20代担当者とのやりとりを見て、すぐに関係性の良さが伝わってきました。
さらに、印象的だったのが、社長がその20代部下を「さん付け」で呼んでいたことです。
仕事を依頼するときにも、
「では、この件、皆にも共有をお願いします。」
というように、「です、ます」を基本にしていました。
社長と2人になったときに、そのことを伝えると、
「いつもではないですけどね。ただ、お互い“いい大人”ですから、年齢や役職は関係なくリスペクトは大切だと思っています。
『お前さー』というような、おらついた言葉がかっこよかった時代は、終わっていますよね」
とのことでした。そんな社長の気づかいに頭が下がる思いがしました。
若手を甘やかせてしまう言葉とは?
一方で、こういった気づかいができていない組織もあります。
たとえば、
「あの一年目の子、どうしてる?」
「去年入社の子が言ってただけど……」
というように、社内の若手を「子」と呼ぶ組織もあります。
一見、愛情を込めているように聞こえるかもしれませんが、おすすめしません。
子ども扱いされて不快感を覚える人もいますし、その言葉どおり「子」でいることに甘え、指示待ち姿勢から抜け出せなくなる人を生むこともあります。
採用された人は、若手だろうとベテランだろうと、「一人前の社会人」として扱うようにしましょう。
親しみを出したいのであれば、日常的なコミュニケーションで補完するようにしてください。
それが、若手の成長を促すうえでの大事な気づかいです。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。