日本仕様のドルフィンは2グレード設定され、バッテリー容量44.9kWhで航続距離400km、モーター出力は70kWのスタンダードと、同58.56kWhで476km、出力は150kWを発揮するロングレンジが用意されている。筆者は、スタンダード版に乗り横浜市街地のホテルから横浜横須賀道路を経由し横須賀までの道のりを2時間ほどかけて往復したが、出足も鋭く高速道路での直進安定性も申し分なかった。
BYDは、このコンパクトBEVドルフィンによる日本市場の攻略として、住宅事情を背景とした都市部でのコンパクトEV需要の取り込みや、地方で見込まれる2台目需要に応えることで拡大を図る方針だ(都市部では、23年度からEV充電設備補助金の増額や25年には東京都で新築マンションへのEV充電設備設置が義務化されるといった追い風がある。そのため、集合住宅などの機械式駐車場における全高制限をクリアするために、わざわざ全高を低くする仕様変更を行っている)。
このため、日本においてはBYDの軽自動車EVへの対抗策が注目されるところで、特にその価格戦略が注目の的となっている。
BYDは9月20日に「ドルフィン」の価格発表会を東京・大手町三井ホールで行い、同日から発売を開始する予定だ。ここで、スタンダードで300万円を切るかどうかが価格競争力を左右する一つの基準になるだろう(ちなみに今年3月にタイ・バンコクモーターショーで発表・発売されたドルフィンは79万9999バーツ、日本円換算では当時のレートで約306万円だったが、この価格設定はタイでも驚きの価格だった)。
また、BYDは、このドルフィンに続く日本市場参入第3弾となるスポーティーEVセダン「SEAL(シール)」を23年下半期に投入する予定だ。この攻勢はしばらく続きそうだ。
(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)