「早食い」を続けていると…
20年後に起こる異変とは

 食べる能力はライフステージにより変化します。乳幼児から成人までの期間(0~20歳)で基本的な食べる能力を獲得し習熟させ(発達期)、成人期から壮年期(20~65歳)にかけて能力を維持し(維持期)、老年期(65歳以上)で能力が衰えます(減退期)。

 子どもの頃に噛む訓練ができていないと、大人になっても上手に噛めないことがあります。新潟大学の調査によると、3~12歳の30%に口腔機能が十分に発達していない症状の一つである「口唇閉鎖不全」(いわゆる「お口ポカン」)が見られるそうです。口腔機能は子どもの頃の正常な発達が重要であることから、2018年より同症状は保険治療の対象となり、治療を導入する歯科医院が出始めました。

 また、噛まずに飲み込む「早食い」は、口腔機能の能力低下を加速させます。前述のように特に40代男性は噛む意識が低いため、減退期への影響も大きく、早期の衰えを誘発します。

 厚生労働省によると、日本人の平均寿命は男性81.41歳/女性87.45歳です(2019年)。が、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は男性72.68歳/女性75.38歳と、その差はそれぞれ約9年/約12年もあります。この平均寿命と健康寿命の差がある期間で、要医療から要支援・要介護へと移行します。

 人はある日突然不健康になるのではなく、その一歩手前に「体重減少」「疲れやすい」や「社会への無関心」など加齢による心身の衰え=「フレイル」(虚弱)の症状が出ます。いったんフレイル状態に落ち込むと、健康に戻るのは困難です。だからこそ、フレイルの前駆状態である「オーラルフレイル」(話がしにくい・飲み込みにくい・むせる・こぼすなど歯や口の衰え)に気を配ることが重要です。

 仕事に忙しい中年読者の皆さんにお伝えしたいのは、噛む意識が低いと、オーラルフレイルから全身のフレイルに至り、さらには低栄養や筋力低下の「サルコペニア」を引き起こすなど、「負の連鎖」を生むということです。