信号待ち停車で
到着に遅れ

 車内で運賃精算が完結するLRTにおいて、タッチだけで完結するICカード利用と、運転席後ろまで移動し、運賃箱で両替・運賃支払いの必要がある現金利用は運行に与える影響が大きく異なる。

 宇都宮ライトレールはIC利用を推進しているが、Suica・PASMO利用圏内の宇都宮では元々、ICカードを保有している人が多く、加えて宇都宮ライトレール開業に先立って2021年にサービスを開始した、県内バス事業者でも利用できるICカード「totra」も普及しているようだ。なおJRや私鉄ではICカードの新規発行を制限しているが、totraについては在庫があり、発行が可能とのこと。

 ただ土休日は事情が異なる。開業翌日(実質的な開業初日)は現金払いの乗客が1割いたため、最大で40分程度の遅れが生じた。翌週の土日も遅れがひどかったようで、新しい乗り物を一目見ようと、普段鉄道に乗り慣れていない乗客が多く押し寄せたとしても今後の定時運行に不安が残る。

 平日のラッシュ時間帯は筆者が先頭車両で観察していた限り、終点まで現金精算した乗客は数人で、ほぼ全てがICカード利用だった。28日と4日の両日を見ても、最も対応に時間がかかったのはICカードにエラーが発生した旅客と、目的地とICカードの利用に不安を感じた外国人旅客にそれぞれ30秒を要した程度で、朝ラッシュにおいては現金払いに起因する遅れはほとんどないように見えた。

 しかし終点の芳賀・高根沢工業団地に到着時、28日は約5分30秒、4日は3分30秒程度遅延した。4日に乗車した電車は、ゆいの杜中央停留場までほぼ定時だったが、発車時点で1分30秒の遅延。また芳賀町工業団地管理センター前停留場で遅延が3分まで拡大した。どちらも信号待ちで1分強停車したことが影響している。

 28日の電車でも芳賀町工業団地管理センター前停留場の先にある、芳賀バイパスとかしの森公園通りの交差点の長時間停車で遅延が2分ほど増えていた。宇都宮ライトレール線では主要交差点でLRTを優先するPTPS(公共車両システム)が導入されているが、時間にゆとりを持たせた暫定ダイヤでも遅れが生じるとなると、来年春を予定している本格運行に影響しかねない。遅延改善のためさらなる対応が求められるだろう。

 日本初の新設LRTの成否は、今後の地方都市の交通政策に大きな影響を及ぼす。特に自動車社会の宇都宮においてLRTが成功すれば、他都市で検討されているLRT計画を促進することになるだろう。

 宇都宮ライトレール線の成功には、これまで述べた通勤輸送の円滑化に加えてLRT転移の促進が不可欠だ。需要予測で最低限の値として見積もった1割程度の定期外利用をどの程度増やせるか、具体的には宇都宮駅前または鬼怒川以東から沿線商業施設のベルモールへの移動などを増やすなど、需要拡大の取り組みを強化する必要があるだろう。

 以上、本稿で記した疑問は宇都宮ライトレールに問い合わせ中だ。取材ができ次第、続報をお届けする。