「別班」が初めて
世間に知られたのはいつ?

 ほとんどの読者はVIVANTを見て別班のことを知ったと思うが、実のところ存在自体は1973年の金大中氏拉致事件で明るみに出て、国会で質疑も行われている。

 この事件は、後に韓国の大統領となる金大中氏が都内のホテルで韓国情報機関によって拉致されたもので、事件に元別班員と指摘された人物が関係していたため、別班がフォーカスされたのだ。

 そして、1978年には日本共産党が別班についての調査の集大成ともいうべき『影の軍隊 「日本の黒幕」自衛隊秘密グループの巻』を発行するに至る。

 この本の感想を一言で表すと、共産党の調査能力は極めて高いということだ。別班の登竜門といわれる陸上自衛隊調査学校(当時)の心理戦防護課程で、作家の三島由紀夫氏がスパイ活動やゲリラ戦の訓練を受けた話など刺激的なエピソードがてんこ盛りで、VIVANT並みのエンターテインメントと言っても過言ではない。

 共産党としては、自衛隊の秘密情報機関は危険だということを訴えたかったのだろうが、本書の内容に刺激を受けた調査学校志望者が急増したという。恥ずかしい話だが、実は筆者もその一人だ。

自衛隊関係者による
「暴露本」も続々出版

 自衛隊のインテリジェンス関係者は、その後、別班について沈黙を守ってきた。だが、ミレニアムを経て、関係者が鬼籍に入りそうになると、過去の活動を語り出した。

 代表的なものとして、山本舜勝『自衛隊「影の部隊」 三島由紀夫を殺した真実の告白』(2001年)、塚本勝一『自衛隊の情報戦 陸幕第二部長の回想』(08年)、松本重夫『自衛隊「影の部隊」情報戦秘録』(08年)、阿尾博政『自衛隊秘密諜報機関 青桐の戦士と呼ばれて』(09年)が挙げられる。

 これらの本は、いずれも別班を含む自衛隊インテリジェンスの当事者が著したものなので、一部に「手前みそ」なところもあるが、別班の姿をある程度正しく伝えているといえるだろう。

 そして、かつて元別班長であった平城弘通氏が、10年に『日米秘密情報機関 「影の軍隊」ムサシ機関長の告白』を著した。この本は、別班を語る上で絶対に外せないだけではなく、64年から66年にかけての別班長が著しただけあり、資料性も極めて高い。