「自衛隊の高校」の生徒たちの
厳格な1日のスケジュール

 その後、生徒たちの生活について聞いた。生徒たちは厳格なスケジュールの下で、規則正しい生活を送っている。

案内される田原氏

6:00 起床
6:05 点呼
6:15 清掃
6:45 朝食
8:00 朝礼
8:15 国旗掲揚
8:30〜12:00 午前の授業
12:00 昼食
13:00〜16:00 午後の授業
16:00 クラブ活動
17:00 国旗降納
18:00 夕食・入浴
19:00 自由時間
20:00 自習時間
22:10 点呼
22:20 消灯準備
22:30 消灯

 といった具合だ。生徒の1日の様子と3年間の活動のダイジェスト動画による紹介もあった。

ロッカーの写真Photo by Y.O.

 生徒たちが寮生活を送る南7号隊舎の施設も見学した。寝室は二段ベッドが並べられた共同の部屋で、ロッカーには迷彩服、シャツ、ジャケットなど整然とつるされている。

 私物はロッカーに入る分量のみ所持が認められるという。なお、スマートフォンを持てるのは1年生の冬からだ。自習をする際には、机がズラリと並べられた別の大部屋を利用する。

 製造現場で徹底されている5S(※4)が実行されており、備品や荷物は乱れなく整理されていた。
※4 整理、整頓、清掃、清潔、しつけのこと。

 校舎の入り口には、体力検定、3000メートル走、腕立て伏せ、膝半屈腹筋(膝を立てる腹筋運動)の各項目の優秀者と、総合得点の優秀者が、反対側の壁には、一般教育、専門教育など、座学の定期試験の成績優秀者が、それぞれ顔写真付きで掲示されていた。

 今の時代、少し窮屈な気がしなくもないが、ここは陸上自衛隊の学校である。

高等工科学校の男女共学化と
陸・海・空の自衛隊の共同化へ

 2022年に閣議決定された防衛力整備計画では、高等工科学校を、陸のみではなく、陸・海・空の自衛隊の共同の学校に改編することや、男女共学化の方針も示された。前例もなく時間がない中、関係者たちはカリキュラムづくりや運用の詳細の決定に腐心していると言う。

「自衛隊では女性も活躍しているはずだ。男女共学化に5年を要する(※共学化は2028年度に実施予定)理由は何か?」と聞くと、教官の確保や、トイレなどの施設の整備など、多くの課題をひとつひとつ解決するにはやはりそのぐらいの期間が必要とのこと。

 一方で、元自衛官が訓練中に受けたセクハラ被害の告発やパワハラなど、自衛隊内のハラスメントに関する不祥事が続いている。このような被害が二度と起こらないよう、防衛省全体でハラスメントに対するマインドセット(思考や固定観念)を大きく改革し、誰もが安心して入学できる環境をしっかりと整えることが必要だろう。