駆け込みで買いだめすべき?ものによってタイミング重要
これまでビール飲料価格の変化を見てきたが、同じ商品であっても、価格は小売店によっても異なる。同じ店でもキャンペーン的に安いブランドがあったり、夏に比べて秋が深まるとセールが減って価格が上がったりと、さまざまな要因で変動する。
2020年の取材改正でも、10月以降の販売価格は上がったものの、需要が伸びる12月は若干だか価格が下がる動きもあった。今回を予測すると、むろん10月の新ジャンルは値上げになるだろう。しかし、2022年に値上げ済みで、消費者の財布のひもは固くなっている状況から、買い控え対策として需要が高まる頃には特売品も出てくるのではないか。
今のところ、新ジャンルの350ミリリットル・6缶パックの店頭価格は699~715円という金額になっている。前回の税制改正時の筆者のメモを参考に70円ほど上がるとすると、1パック770円当たりの数字を見ることになるだろうか。
販売店は当然、値上げ前の駆け込み購入を期待している。2020年でもその動きは見られた。消費者としては、酒税だけでなく、“コスト上昇による値上げ”の動きが今後もしばらく続くと想定するなら、家のストック庫の広さと相談しながら1~2カ月分くらいの買いだめをしてもいいだろう。逆にビール党なら、価格引き下げの恩恵を受けられる10月を待った方が、むろんいい。
ストック庫の広さ、と書いたのは、目につくところに買いだめ分があると、人の心理の常として、気前よく飲んでしまうからだ。冷蔵庫にぎっしり冷えた缶が詰まっていると、スペースを空けるためにもどんどん飲んでしまおうなんてことになると、目も当てられない。
また、年末になると、ビール系飲料の需要を伸ばす消費喚起のため、いわゆる「広告の品」的セールも期待できる。
プライベートブランド(PB)への注目も高まりそうだ。イオンのトップバリュ「バーリアルグラン」(発泡酒)は350ミリリットル・6缶パックで、現在638円。メーカー品の新ジャンルよりも若干安めだ。コンビニPBのビール系飲料はここまでの安さではないが、10月以降の価格推移を見守りたい。
なお、ふるさと納税の返礼品にビール系飲料を選んでいるなら注意が必要だ。10月から制度改正が行われ、返礼品に影響が出る可能性があるからだ。具体的には「5割ルール」の適用を厳格化する。ふるさと納税の募集にかかる経費は、我々が寄付した金額の5割以下に収めるとのルールがこれまでもあったが、今までは目こぼしされてきた寄付金の受領証発行のための事務費用、ワンストップ特例に関する申請書の受付事務費用等の経費なども、10月からは「募集に要する費用」に含めよと厳格化される。5割に含む費用がこれまでより増えるとなれば、10月以前と同じ返礼品を受け取るためには、寄付金額もその分増やす必要が出てくる。あるいは、これまでと同じ寄付金額では、受け取れる返礼品の分量が減る可能性もある。ビール自体は税率が引き下げになるので影響は小さいかもしれないが、連年通りの数量を受け取りたいなら、9月中に寄付を済ませる方が安心だろう。
いずれにしても、新ジャンルのビールの値上げは避けられそうにない。2026年10月には3種類の税率は54.25円に一本化される。そうなれば、発泡酒や新ジャンルというカテゴリー分けも実質消滅してしまうだろう。この時にはチューハイなどの低アルコール蒸留酒も、今の28円から35円に引き上げに(350ミリリットル換算)。手軽なアルコールばかり狙い撃ちとは、安い酒で憂さを晴らすことすらままならない酒飲み受難のご時世がやって来る。