「1日に飲むべき水の量」はどれくらい?普段と運動前・中・後の目安を専門家が解説Photo:PIXTA
*本記事はEsquireからの転載です。

水分補給を忘れがちでは?

 筋力トレーニングのためや身体の健康のために栄養に意識を向けると、つい「タンパク質をどれくらい摂るべきか?」とか「1食で摂るべき炭水化物や脂質の量は?」とか、栄養素のことばかり先行して考えてしまいがちです。そしてそれによって、重大な要素をついつい見落としてしまう人も少なくありません。それが…、「私たちはどれだけの『水(H2O)』を飲むべきか」です。

脱水症状による悪影響

 私たち成人の身体の約60%は、水分(体液)であることがわかっています。そこには血液も含まれます。血液にフォーカスするなら、およそ体重の13分の1(約8%)が目安の量と示され、さらにズームアップするなら血液の半分以上が、約90%が水分とされる血漿(けっしょう)になります。

 つまり、体内の水分量が減少すると…血液中の水分も減少することとなり、粘度が高い状態のいわゆる「ドロドロ血液」になる恐れが。そうなると、栄養素や酸素がうまく運ぶことができなくなり、体調不良を起こす可能性も高まります。さらには、循環器系への悪影響も予想ができるのでは。なので、日ごろから水分を多く摂取することを心がけることが大切となるわけです。ただし、心臓病をもっている人の中には塩分制限と同様に水分制限も必要な場合もあるので、医師にご相談ください。

水分補給で「サラサラ血液」を

 要は日々の水分補給を心がけることで、「サラサラ血液」になることを目指すのです。そうすれば、血液も細胞に行き渡り快適な環境を得ることとなり、細胞そして代謝も活性化することが期待できるはず。この流れで言えば、脳への血流も良くなって、脳による意識の覚醒水準も上がることでしょう。つまり、身体全体の活動性も上昇し、運動パフォーマンスも安定状態から最大化することも望めるのです。

 なので、脱水症状にならぬよう細心の注意が必要となるわけです。炎天下での仕事やスポーツ、レジャーや野外活動をしているときなど活動に没頭するあまり、その兆しを示す諸症状に気づかず、そのまま熱中症を引き起こして倒れることもあるので要注意です。特に夏には、十分な水分補給を行うよう心がけましょう。

水分補給でパフォーマンス低下を防ぐ

 カナダの応用生理学の専門誌『カナディアン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジオロジー』に掲載された研究報告によれば、運動中に脱水症状が起きると有酸素運動能力が低下し、その結果として体温、心拍数が上昇し、疲労を感じやすくなることが分かっています。

 わずかな脱水症状によりパフォーマンスが大幅に低下してしまうというのですから、これは心配です。体重の2%相当の水分が失われるだけで、もう同じように動くことができなくなると言います。マラソンランナーなどの持久系アスリートの場合、脱水症状が起きることでパフォーマンスが最大60%も低下してしまうという研究結果もあります。ジム通いをする人々にとっても他人事ではありません。スポーツ医学の専門誌『Sports Medicine』に掲載された研究報告によれば、「脱水症状によって、筋力(2%ほど)・パワー(3%ほど)・高強度持久力(10%ほど)が低下する」とされています。なので、水分補給はパフォーマンスの低下を防ぐことから、最大化へと導くポジティブな流れをもたらしてくれるものと言えるのです。

 それでは、いったいどれだけの「水」を飲めば、ジムや屋外での運動で最高のパフォーマンスを発揮することができるのでしょう? そんな疑問をもつ人のために、ソレント大学で応用栄養学・人間栄養学部を率いる運動栄養学の専門家、アリ・ヒル博士にたずねました。これで、喉(と身体)の渇きとはサヨナラです。