アラブの格言「敵には一度、友には常に気をつけよ」

 今まで日本はオイル・ショックの危機が喉元を過ぎると、すぐアラブを厚く遇することを忘れた。しかしアラブはそのような浅はかな、ご都合主義の国や人をまたはっきりと侮辱する。エネルギーの問題に関してアラブ諸国の力を借りなければならないのなら、日本は常にアラブに関して(金を出すだけではない)古い誠実な友でい続けなくてはならないのである。アラブの格言の中には「敵には一度、友には常に気をつけよ」というのがあるほど、彼らには冷めたところもあるのだが、一方で砂漠で敵味方共に生き延びるには、お互いに理性ある保護なしには不可能なことも彼らは知っているのである。

 この際、私たちはやはりもっと彼らの心情を知る必要がある。「皆が平和を望めばそうなるのに」式の甘い考え方が、世界中で道徳的にも通ると信じ切っているのが日本人なのである。

 新聞社も、その手でアラブ問題を考える投書を平気で投書欄に採用する。このような新聞社の無知が続く限り、日本はアラブとのやや安定した関係を維持することもむずかしい。 アラブはもちろん、西欧にもアメリカにも「真理のため、国家と国民の安全のためには、人は死なねばならぬ時もある。そしてその死は栄光に包まれたものである」と考える人はいくらでもいる。

 善悪ではなく、どちらが変わっているかと考えると、考え方が孤立しているのは日本人の方なのである。

【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。
タイトル:曽根綾子→曽野綾子
(2023年9月27日17:07 ダイヤモンド編集部)