今回の起用は小渕氏にとって
飛躍のチャンス!?

 青木氏は小渕恵三内閣の官房長官で、茂木派の長老として隠然たる影響力があった。小渕優子氏の“実質的な後見人”といえる立場だったが、今年6月に89歳で死去した。

 一部報道によると、青木氏は生前「われわれの使命は小渕優子内閣を作ることだ」と公言していたという。そして、森喜朗元首相がその「遺志」を後押しした。

 青木氏は小渕元首相が急死した際、森氏を後任に決めた人物だとされる。いわば森内閣の生みの親だ。青木氏に恩義がある森氏は、その「お別れの会」で「(小渕優子内閣を作るという)夢がかなうよう最大限努力してまいる」という趣旨の発言をしたと報じられている。

 今回の小渕氏の選対委員長への起用にも、森氏の意向が反映されているようだ。それが事実ならば、またもや長老の寵愛による抜擢である。実力でもぎ取った要職だとは到底いえない。

 ただし、岸田首相が小渕氏に任せたのは「選挙」の対策である。結果が数字として表れるため、その力量が可視化されてしまう難しい職務だ。「政治家は選挙に落ちたらタダの人」という言葉があるように、結果によって党員の人生が大きく左右されてしまう責任ある立場でもある。

 この人事に鑑みると、岸田首相は小渕氏に対して「長老の意をくんでポストは与えるけれども、実力は自らの手で証明しなければならない」と示したようにも思える。

 一方で、実力さえ証明できれば、今回の起用は小渕氏にとって飛躍のチャンスでもある。選対委員長として候補者一人一人の勝利に向けて汗をかき、結果につなげれば、派閥を問わず人望を得られるまたとない好機となるからだ。所属派閥である茂木派だけでなく、他派閥にも支持を広げられるだろう。

 もし小渕氏が首相就任を本気で目指すならば、この党内での支持拡大が実現のキーポイントになり得る。先ほどの高評価とは矛盾するようだが、高市氏や野田氏は、自ら仲間を集め、若手の面倒を見て汗をかき、派閥を率いて総裁選に勝とうとしたわけではなかった。彼女らは「無派閥」のまま総裁選に出た。いわば、「初の女性首相候補」という神輿に担がれることで当選を目指したといえる。

 これに対して、現段階の小渕氏には、神輿に担がれるだけの人望や実力はないかもしれない。しかし、長老から与えられた機会ではあるが、自ら汗をかき、泥をかぶって仕事をし、成果を出すことができれば、従来の女性政治家にはなかった「数の力」(=党内での支持基盤)を得られる立場についた。