組織の中では男性同士が、たとえば夜の飲食店や週末のゴルフなどで集まり、ビジネスやリーダーシップの話をしたり、次に目をかける人の話をしたりして、非公式の場で大事な仕事の話が進んでいくという実状があります。これを「オールド・ボーイズ・ネットワーク」と言います。

 このネットワークに無理なく入れる人たちは、わざわざキャリアの1on1をしなくても、何となく自分のキャリアについて話したり、助言をもらったりする機会がありました。けれども、そうしたネットワークに入れない人たち、たとえば、介護や育児で業務後や週末の集まりに行けない人たちにとっては、キャリアの話は「蚊帳の外」であることが多かったのです。

 ただ、新型コロナウイルスの世界的な流行によってリモートワークが加速したことで、オールド・ボーイズ・ネットワークが機能していた組織の多くで、これまで当たり前にあった「非公式な隙間時間でするキャリアの話」すらも、すっぽり抜け落ちてしまったという話を多く耳にします。

 さらに、多様な価値観・属性・生き方の人が、自分の能力を発揮し、ワークライフバランスが取れていて、充実したキャリア形成が実現できる組織であることが、今以上に求められています。なぜかと言うと、労働人口が減っている中で、これまでのような似た価値観の日本人男性が中心で同質性の高い組織では、企業活動が維持できないだけでなく、多様化する市場に対応していくこともできないからです。女性や外国人、専門性や年代も異なる多様な人材が活躍できなければ、企業は今後、生き残っていくことはできません。