奥菜さんが公表「尋常性白斑」の原因は?
自己免疫疾患だが不明な点も多い

 今般、奥菜さんが公表した尋常性白斑の原因は、「自己免疫疾患」だと考えられています。自己免疫疾患とは、体に侵入した細菌やウイルスを排除する免疫システムが正常に機能しなくなり、暴走した免疫が自分の体の細胞を敵として攻撃してしまう病気の総称で、関節リウマチや橋本病、1型糖尿病などが知られています。

 尋常性白斑の場合、自身のリンパ球などの免疫細胞が皮膚の色素を作るメラノサイトを攻撃してしまうために色が白く抜けてしまうと考えられていますが、なぜ、メラノサイトを攻撃するのかは分かっていません。進行性の病気ですが、進行スピードはさまざまで、途中で進行が止まることもあります。また、人にうつることはなく、健康を害することもありません。まだ不明な点が多く、難治性ではありますが、難病には指定されていません。

 尋常性白斑は年齢を問わず発症し、患者さんは日本の人口の1%程度といわれています。アトピー性皮膚炎は同10%ですので、患者数は決して多いとはいえないでしょう。私のクリニックでも現在、この病気で受診される方は年間50人程度です。最近、患者が増加しているというわけではなく、昔からある病気で「白なまず」とも呼ばれてきました。女性に多いということもなく、患者の男女比も大きくは変わりません。

 また、尋常性白斑は分節型、非分節型の2種類に分類できます。分節型は神経の支配領域に沿って帯状に皮膚が白く抜け、帯状疱疹(ほうしん)のような帯状のイメージです。一方、非分節型は全身のいろいろな場所の皮膚が徐々に白く抜けていきます。白斑を発症する部位は人によって異なり、急速に進行して顔全体など広い範囲が抜けることもあります。

 公表された文章を読んだ印象では、奥菜さんは非分節型だと推測します。分節型は小児、非分節型は大人に多い傾向があります。そのため、非分節型の尋常性白斑と老人性白斑を見分けるポイントとしては、老人性白斑は上述のように5mm程度までで、それ以上大きくなったり、融合(つながったり)したりしない一方、尋常性白斑は5mm以上に大きくなったり、つながることが多いのが特徴です。

 治療方法は塗り薬が一般的で、日本皮膚科学会のガイドラインで最も推奨しているのは、ステロイド外用薬です。他に、白斑に紫外線を照射することで色素の再生を促す紫外線療法も有効だと考えられています。

 この紫外線療法と並行して、ビタミンD3や免疫抑制剤のタクロリムスの塗り薬が使われることもあります。ただし、ビタミンD3とタクロリムスの塗り薬は保険適用ではありません。また、進行性の場合、ステロイド薬を内服することもあります。

 さらに、外科的な治療法として皮膚移植もあります。色素が抜けていない部分から約1~2mmの皮膚片を白斑部位に移植します。移植部位に紫外線療法を行うなどすることで、皮膚片から徐々に色素が広がり、白く抜けた部分が埋まっていきます。この皮膚移植の治療を行っている病院は少ないので、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

 治療以外では、専用の特殊なファンデーションで白斑を隠す方法もあります。尋常性白斑は痛み、かゆみなどはありませんが、発症が目に触れる部位である場合、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させていることが報告されています。ファンデーションの使用は根本的な改善にはならないものの、QOLを上げるという点では非常に効果が大きいといえます。