「会社に対する不満が蔓延している」、「なぜか人が辞めていく」、「社員にモチベーションがない」など、具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、近年話題の「組織開発」というアプローチだ。組織開発では、「対話」を通してメンバー間の「関係の質」を向上させていく。そんな組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介したのが、『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)だ。本記事では、発売後即重版となった本書の出版を記念して、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
せっかく発言しても意見を否定される「ざんねんな会議」
――風通しの良い職場を目指して、毎週チーム単位のミーティングを実施している職場は多いようです。しかし、管理職が職場のメンバーに意見を求めても、ミーティングの場では誰も話そうとしません。管理職が一方的に話すミーティングから、意見が闊達に飛び交う場へ変えるにはどうしたらいいのでしょうか?
ミーティングの場で発言できない経験は誰しもあるのではないかと思います。
発言したことを否定されて傷つきたくない、誰も私の意見など求めていないかもしれない、今発言してよいのか空気が読めない……など、ミーティングの場は、発言できない人にとっては怖いことがいっぱいです。
しかし、発言しないからといってアイデアや意見がないわけではないのではないかと思います。
「発言しない」のではなくて、「発言できない」のですね。管理職やメンバーは、この怖さを取り払わなくてはなりません。どうしたらよいでしょうか。
発言できない雰囲気を変える、ファシリテーターの役割とは?
管理職になると、メンバーが考えたアイデアそのものが財産であり、会議の成果としてそれを統合してより良いものにしていくことが大切であることが分かってきます。
なので、全メンバーが安心して意見が言えるミーティングの場をつくりたいと、誰もが考えると思います。
組織開発の分野では、ミーティングや組織の「安全の場」をつくる技術を、「ファシリテーションスキル」と呼び、それを実践する人を「ファシリテーター」と呼んでいます。
日本語に訳すと「援助促進者」。場を援助しながら促進する人という意味になります。ファシリテーターに必要なスキルとしては、以下が書き出せます。
- ・場の雰囲気をつくる
- ・参加者の意見をひきだす
- ・議論の方向を見極める
- ・どの発言に対しても耳を傾ける
- ・表情やしぐさなどを気にする
- ・参加メンバーの意見をまとめる
管理職の方にとってはすぐに身につけたくなるスキルですね。
ところで、もっとシンプルに行動することも出来ますのでご紹介しておきます。
「発言」以外の役割を与えることで場を促進する
ひと言でいえば「安心の場」をつくるためには、メンバー全員が「協働」できるように支援をおこなうのです。
「協働」は組織開発が大切にしている価値観のひとつです。
「〇〇さんはどう思いますか?」と呼びかけてあげる、誰かが発言したら「それいいね」「私もそう思う」と反応する、「ホワイトボードにまとめてくれる?」と役割を引き受けてもらう。
管理職だけでなくメンバー誰もが気軽にリーダーシップ行動を発揮できるように声がけしていきます。誰かと一緒ならば、動ける人は多いものです。
誰も話そうとしない場でお困りの管理職の方は、たとえば「私は今、困っています」「みなさん一人一人のアイデアを教えてください」と言ってみるのもオススメです。
思いがけず、場を促進する体験ができるかもしれません。