「お檀家さんの中には、独身だったり、お子さんがおられなかったり、子どもがいても過疎化の進む当地では故郷を出てしまい、お墓の後を託せないなど、さまざまな事情の方がおられます。『せめて自分が生きている間は、パートナーの供養をしたい』『独身だけどお墓がほしいし、友人知人にお参りしてほしい』と思っていても、継承を前提とした従来のお墓だとその機能がないのでお墓を持つことを最初から諦めて合祀墓を選んだり、子どもがいるのに早々に墓じまいをされたりするのがこれまででした。結果、檀家としての付き合いもそこで断たれてしまいます。お墓としての機能を持ちつつ後の『墓じまい』の心配がいらず檀家としてお寺との関係を続けられる預骨塔は、当人も遺族も納得のいく供養をするための中間地点。お寺にとっても人口減少時代にさまざまなライフスタイルが生じるなか、檀家さんと向き合う形が作れる。お互いの需要がぴったり合うんです」(大澤副住職)
性的少数者にも
対応する多機能墓
一人でも、家族でも、友人知人でも気の合うグループでも、そしてLGBTQを含むどのようなパートナー同士も利用できると打ち出す多機能型のお墓も生まれた。
昨年、佐賀県伊万里市にある浄土真宗本願寺派浄誓寺が、市内の株式会社山億と提携して造った「合同墓(永代墓)」だ(写真)。
区画によって利用方法と志納料が異なり、お骨を粉末状にして合葬する「永代合葬」一人5万円、一人からでも個別安置できる「棚型収骨(個人収骨)」一人20万円、自由なパートナーの組み合わせで利用できる「プレート型収骨(ペア収骨)」一区画40万円、墓じまい後の収蔵先にも対応した「ロッカー型収骨(家族・グループ永代収骨)」一区画100万円だ。
このうちペア収骨と個人収骨は収骨(ペアの場合は後に収骨した人)から12年(13回忌)たったら合葬する。同寺では会費や管理費は不要だが、遺族がいる間は法事を勤めることを勧めている。遠方や施設に入居するなどお参りが難しい場合はリモート法要にも対応している。
浄誓寺の僧侶、古川潤哉さん(47歳)があえてその後の供養も視野に入れて多機能性を持たせたのは一つに「お墓に対する悩みの多様化」がある。こう話す。