「一口にお墓の悩みといっても、都市に移住した方や単身者の『お墓がない』というものから、実家や嫁ぎ先のお墓に入りたくない、パートナーシップで実家や親戚には認めてもらえない関係である、後継者が不在、少子化で後継者同士が結婚して両家のお墓を見ていかなければいけないので複数のお墓をまとめたい、山中の共同墓地からお参りしやすい場所に移したい、都市部のお墓が高すぎるなど多様です。お墓のニーズも代々の家の墓を大事にしたいという方もいれば、個人墓を大事にしたいという方もいる。そうした悩みに応える受け皿を目に見える形でお寺が積極的に準備する時代に入ったのではないかと考えました」

 もう一つが、先の文昌寺にも共通するが、「子どもに迷惑をかけたくない」と親世代が早々に合葬の選択肢を選び、後の供養はお寺に丸投げする今の風潮への疑問だ。

「『迷惑をかける』という表現に疑問を持っていました。ご自身は法事や葬儀を迷惑だと思って勤めてきたのでしょうか。また親のために法事を行うことが、子どもにとって迷惑だと勝手に決める考え方は果たして妥当なのか。浄土真宗では、法事は残された者が仏縁(仏教の教え)に遇う機会と捉えます。親世代が安易に合葬を選ぶことは、本人のみならず後の世代に対しても仏縁を奪うことになる。仏縁を失わずにお墓の悩みを解消するための多機能墓に行き着いたというわけです」

 2020年の国勢調査では一般世帯における「単独世帯」がついに全体の4割近くを占めた。生涯未婚率も高まる日本において、お墓をどうとらえるか。ロスジェネ世代の40代の僧侶たちが提案する「レンタル墓」や「多機能墓」の登場は、お墓を通じて亡き人を悼み、自らの生き方を見つめるという供養の本来的な意味を今一度、問いかけているのかもしれない。

(ジャーナリスト 加福 文)