岐路に立つビズリーチ 大解剖#2Photo:pixta

ビズリーチが2016年に開始した人事システム事業「HRMOS(ハーモス)」。当初は第二の収益の柱として市場関係者からの期待は大きかった。ところが、7年たった今も売上高はビズリーチ事業の20分の1以下、営業損失は直近5年で累計86億円超という散々な結果だ。特集『岐路に立つビズリーチ 大解剖』(全5回)の#2では、HRMOS事業部の一部の社員のみに共有されている内部資料から、赤字続きの原因と将来性を徹底検証する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

急成長のビズリーチに試練
赤字続きのHRMOS事業を内部資料で検証

「ビズリーチで稼いだ利益が、HRMOS(ハーモス)に食われている」――。

 ビズリーチ事業部に所属する社員は、足元の自社の窮状をそう吐露する。

 HRMOSとは、ビズリーチが手掛ける人材管理システムだ。2016年にサービスを開始して以降、HRMOS採用(管理)、HRMOSタレントマネジメント、HRMOS勤怠、HRMOS経費とシリーズを拡大している。24年7月期にはHRMOS人事給与をリリース予定で、収益の多角化は着々と進んでいるように見える。

 しかし、第二の収益の柱として期待されたHRMOS事業の現状は悲惨だ。

 HRMOSがサービスを開始した16年6月14日のリリースでは、3年後(19年6月)の導入企業数の目標を2000社以上とうたっていた。

 それから3年後の19年6月14日のリリースでは、累計導入企業数を700社超と公表している。累計でも目標の約3分の1の進捗だ。なお、直近の23年7月末時点でもHRMOS採用とHRMOSタレントマネジメントを利用中の企業数は1546社と、当初の構想には程遠い。

 結果は全体の数字にも表れている。下図はビズリーチ事業とHRMOS事業の売上高と営業利益の推移を示したものだ。HRMOS事業の売上高はビズリーチ事業の20分の1以下で、営業損失は過去5年で累計86億円超と、ビズリーチ成長の足かせになっているのだ。

 なぜこれほど赤字が続いているのか。ダイヤモンド編集部は、HRMOS事業部の一部の社員で共有されている膨大な競合対策資料と営業トーク事例集を入手した。この資料を子細に検証すると、HRMOS事業部の社員が自社サービスの何に苦心し、どこに弱みがあるのかが浮かび上がった。

 さらに別の内部資料を基に、ビズリーチ事業とHRMOS事業に所属する部署別の人数を比較した。すると、HRMOS事業には組織の体制としていびつな点があることも露呈した。HRMOS事業が赤字続きの原因と、その後の成長ストーリーも見通しにくい理由を余すところなくお届けしよう。