「思考の質」はどうすれば高めることができるのか? 「デジタルマーケティング」の分野で圧倒的支持を受けるマーケティングコンサルタントの戸村恵太氏に、マーケター、コンサルの視点で「思考の質」を高めるポイントについて聞いてみた。

【コンサルが教える】仕事ができる人はやっている「思考の質」を高める習慣Photo: Adobe Stock

思考の質は「分析」よりも「体験」で高まる

戸村恵太(とむら・よしたか)
株式会社デジタルインテリジェンス代表取締役社長。マーケティングコンサルタント。大手メディアバイイングでのアカウント営業、メディア事業会社の新サービス開発、データビジネス事業会社設立などに携わり、2014年よりデジタルインテリジェンスに参画。2020年より同社CEO。自動車、化粧品、通信会社、電子機器メーカーを中心に、シニアコンサルタントとして多くの企業から「マス×デジタルマーケティング」の分野で圧倒的支持を受けている。
【株式会社デジタルインテリジェンス】https://www.di-d.jp/
【note】https://note.com/tomchan_4u

「自分がターゲットだったら」と考えることは、どんな仕事にもとても重要なスキルのひとつです。

 私はよく、企業の広告を担当する部下に「自分でその商品を買おうとしてみた?」と問いかけることがあります。いくらマーケットを分析したところで、自ら体験しないと見えない情報があるからです。

 たとえば、私がとある自動車企業を担当しているときは、自分で実際に車を買おうとしてみました。

 自分が買い替えを検討したとき、「どこで情報を収集したのか」「どのタイミングでディーラーに足を運んだのか」「ディーラーに行ってどうだったのか」など、「体験」には分析では見えない濃い情報が詰まっています。

 実際、そのときは気になる車種があったのですが、私が住んでいる神奈川県には一台もその試乗車がないことがわかりました。これだけでも大きな気づきです。これを知っていれば、この車種の売り伸ばしは「広告だけで解決できない」ことがよくわかります。

どんな仕事も「疑似体験」で本質をとらえられる

 企業の場合、宣伝部は宣伝によって、人事は人材の確保によって課題を解決しようとします。しかし、ターゲットの気持ちになって自社や商品を考えてみると、意外とそれ以外のところに本質の課題があることがあります。つまり、顧客の行動を疑似体験してみるわけです。

 また、商品開発などにしても、「顧客はこれが欲しいはずだ」と考えてしまうことが往々にしてあります。それも「自分が買うなら」と顧客の立場を疑似体験すると、企業側の押しつけではなく、本当に顧客が欲しいものに近づくための思考ができるでしょう。

 一方で、自分ではどうしても体験できないこともあると思います(女性向け商品を担当する男性や10代向け商品を担当するビジネスパーソンなど)。その場合は、やはり実際にターゲットの声を聴くことに尽きます。

 あらゆる観点で、ターゲットの「意見」「感想」「感情」を拾い、自分の中でもう一人の自分(顧客目線)をつくりあげるしかありません。いかに深く傾聴し、創造力を働かせられるか。自分がターゲットではない場合は、それが思考の質を高める第一歩です。