「上場=ゴール」という図式を変えなくては
日本でインパクトのある起業を増やせない

徳成 日本の場合は、スタートアップのイグジット(出口)がほぼ上場しかない、という問題もありますよね。上場が「到達目標」になってしまっている。アメリカなどはその点、いろんなパターンがある。

朝倉 ええ。もちろんアメリカであっても、リターンが大きいのはやはりIPO(新規公開株)ですが、実際はイグジットの9割近くはM&Aが占めています。事業をスタートさせるにあたってイグジットの選択肢としてM&Aがあるわけです。

徳成 日本は、上場した瞬間にそこで終わり、という感じがあり、小粒な上場企業がたくさん生まれてしまっていますね。

朝倉 この風向きを変えていかないことには、限界があると思います。社会を挙げてスタートアップを応援する理由は、決してIPO社数を増やすことではないはずですよね。世の中に大きなインパクトを及ぼし、社会を発展させる企業の予備軍を増やしていくことが本質のはずです。

 今の日本は、生まれたての会社に出資するようなお金は増えつつあるんですけど、いわゆるグロースステージ、レイターステージのお金がまだまだ足りない。どのスタートアップも小規模なIPOを最初から意図しているわけではないと思うのですが、上場する以外に資金調達の手段がない以上、IPOせざるを得ません

徳成 そうですね。僕はたまたま個人としてアメリカのPEファンドに投資しているのですが、その視点でアメリカの資本市場を見ていると、レイターステージ用のファンドがあったり、イグジットしたい別のPEから投資先企業を買ってきてさらなる成長を目指す「PEセカンダリー戦略のPEファンド」があったりします。

 企業が上場するまでの間に何度も、M&Aを繰り返したりファンド間で売買されたりしながら、異なるプレーヤーの間で合理的に企業価値が算定され、会社の価格の形成が何度もなされている。そうしたプロセスを経て、本当にきちんと育ってある程度の企業規模になってから上場する、というパターンがかなり見られます。残念ながら、そこは日本との違いを大きく感じている点です。