「ツケ」でアリ地獄…抜け出せない仕組みを社会が容認

 そして、もうひとつホストと新興宗教が重なる部分があるのは、「高額献金」がもたらす悲劇が長年野放しにされ、最近になって「規制」の必要性を訴えられている点だ。

 先ほどの記事の中で、「青少年を守る父母の連絡協議会」が入る公益社団法人「日本駆け込み寺」の理事である玄秀盛氏も下記の通り、提言されているが、実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。

《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない。もう東京都に対しては働きかけている》(同上)

「売掛」とは「ツケ」のことだ。ホストクラブの上客は1本何十万円のシャンパンやらを入れる。しかし、若い女性などは当然そんな大金をキャッシュでポーンと払えない。じゃあどうするのかというと、「ツケ」で飲む。その代金はホストクラブやホスト側が肩代わりをして後で女性へ請求する。そこでもし女性が返済できない場合、キャバクラや風俗にあっせんされる。そして細々と返済しながらまた「ツケ飲み」をして、アリ地獄のようにハマっていく。

 しかも、近年この「アリ地獄」が犯罪の引き金にもなっている。先日、マッチングアプリで知り合った男性から、恋愛感情を利用し現金約2700万円をだまし取ったとして「頂き女子りりちゃん」と名乗る女が詐欺容疑で逮捕されたことも記憶に新しいだろう。実はこの女性、SNSでこんなことを「告白」している。

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「20~22歳では300万ホストに使うと褒められて23歳からは1000万が当たり前になって24歳では1000万じゃ足りないって世界になって、もうだれか止めてって思っててはやく抜け出したくて、誰かにおかしいから辞めなって言って欲しかった」

「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」
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 いかがだろう。マスコミが報じている、「カルトにハマって抜け出せない被害者」のイメージとまるっきり重ならないか。
 
 実はこのような「ホストがもたらす悲劇」は筆者が事件記者をやっていた25年前から「ありふれた話」だった。繁華街を舞台にしいた凄惨な殺人事件などを取材すると、若い母親がホストに狂って子どもをネグレクトしたとか、ホストに風俗へ売られてメンタルをやられた女性などが、かなりの確率で登場した。2010年、大阪市内で母親が自宅アパートに幼児2人を放置して餓死させるという痛ましい事件があったが、これも原因は母親がホスト遊びにハマッていたからだ。

 しかし、こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない。ホストの業界団体が政界工作をして自民党とズブズブだったから……なんてわけではなく、過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。

 それを象徴するのが、テレビ局だ。「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている。

 アイドルや若手俳優がホストを演じているうちに、ホストは若い男が一獲千金をつかむ憧れの職業となった。「ホストで借金まみれになる女性もいるにはいるけれど、それは自分の意志で貢いだのものだから自己責任じゃん」という感じで、「恋愛商法」を社会が受け入れるようになっていたのだ。