「自分の意志で貢いでいる」という考え方を否定
ところが、山上徹也被告が事件を起こして、「旧統一教会問題」が注目を集めて、「高額献金を払う=マインドコントロール」という話が連日のようにマスコミで騒がれるようになると、風向きが急に変わった。先ほど述べたように「家族」が徐々に声を上げて、被害者支援団体に相談が増えてきたからだ。この流れが、今回の旧統一教会への解散命令請求で一気に加速する恐れがある。
なぜかというと、これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。
ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。
だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張だ。
これに教団や現役信者たちは真っ向から反論をしている。自分たちはマインドコントロールなど受けていなくて、あくまで「信仰心」に基づいて、自分の意志で献金をしていると主張している。誰かに強要をされたものでもだまされたものではなく、納得して自分が稼いだお金を貢いでいるというのだ。
しかし、今回、文化庁が教団の解散請求を認めるという話だ。それはつまり、指摘される「霊感商法」について「悪質性・継続性・組織性」が認められたということなので、教団側の「自分の意志で貢いでいる」という主張を全否定したということだ。
これは旧統一教会以外の新興宗教にとっても「死刑宣告」をされたようなものだ。
本連載の《旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に》の中でも触れたように、理屈上はあらゆる新興宗教をターゲットにできる。反政府運動にも利用できる。自民と連立を組む公明党の支持母体・創価学会の被害を訴える「元信者」をたくさん集めて民事訴訟を起こして、政府に迫れば連立も解消させられる。「社会的に問題がある団体」とは関係を断つと岸田首相が宣言している以上、自民党は「問題」を指摘された団体はすべて切らなくてはいけない。
こういうカオスなことになることに加えて、ホスト業界も致命的なダメージだ。
神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ。