定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる!マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

「金利6%の退職金専用定期預金」に潜む罠<br />Photo: Adobe Stock

「退職金専用定期」は金利2000倍のものも

 退職金は、受け取り方の戦略も大事ですが、その後「どう管理運用するのか」も大切です。金融機関が退職金を狙って、投資信託などの金融商品を次々に売り込んでくるので、どうしていいか迷う方も多いと思います。

 しかし、すぐに決められないからといって、普通預金に置いたままにしておくのでは、あまりにももったいない! 運用や投資の方針は決まっていないけれど、少しでも増やしておきたいという方は、とりあえず退職時期しか利用できない特別な定期預金「退職金専用定期預金」に預けることをおすすめします。

 たとえば、退職金3000万円を「給与受取口座の普通預金」(金利0・001%)に寝かせたままにしていたAさんと、近所の信用金庫などの「退職金専用定期預金」(金利1・5%)に預けたBさんを比較してみましょう。

 1年後、Aさんの退職金についた利息は、たった300円だったのに対して、Bさんの受け取った利息は45万円! どこに預けるかで、45万円もの差がつくこともあるのです。

「退職金専用定期」は、退職時期に限り、0・5~2%程度の高い金利が設定された定期預金で、金利が一般的な普通預金(0・001%)の500~2000倍にもなります。メガバンクよりも地方銀行や信用金庫などのほうが金利が高い傾向にあるようです。
「退職金専用定期」でネット検索すると紹介されているサイトなどもあるので、探してみるといいでしょう。ただし、どこも金利が優遇される期間は、1~6か月程度と短く設定されていますので、そのまま置いておくと低い金利になってしまいます。そんな時は、預け替えがおすすめ。優遇金利の期間が過ぎたら、また別の銀行の「退職金専用定期」に預け替えて、2度3度と優遇金利を受けることもできるのです。
「退職金専用定期」が利用できる期間は銀行によって、退職後「3か月以内」という短期のものから「1年以内」「3年以内」といった長期のものまで様々です。事前に調べておいて、利用できる期間が短いものから長いものに預け替えていけば、高金利の期間を1年以上に延ばすことも可能です。先ほどの、Bさんも「退職金専用定期」の預け替えを成功させ、1年間で金利1・5%を実現し45万円ゲットしたのです。

破格の高金利のものは、よく吟味して!

「退職金専用定期」は、非常にオトクだと書きましたが実は、注意してほしいものもあります。それは、投資信託やファンドラップなどのリスク商品と抱き合わせ販売されているものです。
 金利6%(3か月)など、破格の高金利のものは、ほとんどの場合、定期預金と「同額」の投資信託等を購入することが条件となっています。

 投資信託が悪いというわけではありませんが、抱き合わせされている投資信託は、選べる種類も限られていて、震えるほど手数料等が高い(3%のものも!)ことが多いので、すすめられるままに買うのは避けたほうが無難です。

 たとえば知人のCさんは、退職金3000万円を、銀行の人にすすめられるまま定期預金(金利6%・3か月)と投資信託の同額抱き合わせプランで運用することにしましたが、実はこの投資信託の購入手数料は3%でした。この場合、

 定期の利息は、1500万円×6%×(3/12か月)=22万5000円となります。
 いっぽう、投資信託の購入手数料は、1500万円×3%=45万円となります。

 なんと、Cさんは、最初の時点で、定期預金の利息よりも投資信託購入手数料のほうが高くなることが決定しています。しかも、投資信託は運用している間手数料が取られます。この手数料も高いものでは2%以上かかるものもあります。

 これでは、よほど投資信託の運用がうまくいかない限り、退職金が減ることはあっても、増える可能性は低くなってしまいます。
 Cさんは今では、定期預金の高金利につられて、うっかり検討もせぬままに投資信託を購入してしまったことをとても後悔しています。もし、最初からこのからくりを知っていれば、ちゃんと手数料や内容を検討して、自分でも納得のいく投資信託を購入していたと思うからです。

 *本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋し新原稿を加えて編集したものです。