「仲のいい上司部下の関係は、組織にとって害悪である」
そう語るのは、これまで3500社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「誰も言ってくれないことが書いてある」と話題の著書『とにかく仕組み化』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに、仕組み化のメリットを説いた。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「できる上司」になるためのマネジメント方法を解説する。(構成/種岡 健)

「仲のいい上司部下の関係」が会社組織にとって害悪である理由Photo: Adobe Stock

「人事異動」の本当の意味

 組織の「属人化」を防ぐためにも、「人事異動」は有効です。
 私の会社では、原則的に「3年に一度の人事異動」をおこなうようにしています。
 それは、どんなに仕組み化によって考え方を切り替えていても、同じ部署で同じ業務を続けていると、「属人化」が生まれてしまうからです。

 1つの業務に慣れてくると、人は、できるだけ頑張らずに作業をこなすようになります。
 そこで、複数の部署があるならば、人事異動が効果的です

 もし、営業職で多くを占める会社であれば、そういう人事はできないかもしれませんが、その場合でも、配置換えや担当変えはできるはずです。
「扱う商品やサービス内容を変える」「エリアや担当者を変える」など、新しく頭を切り替えるような変化を加えます。

 放っておくと、同じ得意先へのルーティン作業だけで目標をクリアし続けられるようになってしまいます。
 その状態は、「属人化」の一歩手前です

 そのタイミングに人事異動などをおこなうことで、また一から試行錯誤する状態にリセットができます。
 リセットといっても、前の業務スキルを引き継いでいるわけですから、さらに大きな視野で次の業務に当たることができます

 そうやって、1つ1つの壁を越えていくことで、より大きな視点を獲得していく人が、さらなる「出世」をしていきます。

「1つの業務しかしていない人」はリスク

 これがもし、1つの部署しか経験していない人が叩き上げで出世したら、どんなことが起こるでしょう?

 たとえば、営業だけをやってきた叩き上げの人が、営業部長になるとします。
 そして、その営業部長が自分で稼ぐようになります。
 いつまでもプレーヤーの動きを続けて、「自分のやり方」を全員に押し付けて、画一化します
 さらに、それに対して何も言わない人だけを過大評価し、副部長や課長に昇進させます。

 上司・部下の関係性でも、「既得権益」は生まれるのです。
 ずっと同じ上司・部下の関係が続くと、そこに「悪い権利」が出てきます。
 簡単に言うと、「仲良くなりすぎる」ということです。

「この上司についていくためだけに頑張る」

 という状況を生みます。
 この感情は、短期的に力を発揮するかもしれません。
 情がわくことで、やる気が出る部分はあるからです。

 しかし、長期的に見ると、デメリットを生み出します
 その上司が部署異動や退職をしたときに、部下たちがそれを不満や会社への不信感に捉えてしまうのです。
 個人としての成長を考えたときに、

「1人でどこでも生きられるようにする」
「どんな組織でも働けて、結果が出せるようにする」

 ということを期待すべきです。
 なので、人事異動と同じく、上司・部下の組み合わせも、定期的に変える仕組みが必要です。

いい組織は「引き継ぎができる」

 同様の理由で、営業先のクライアント担当なども配置換えをしたほうがいいでしょう。
 異動したり、転勤したりすると、担当者が変わります。
 そうすると、お客さまのほうから、

「前の担当者がよかった」
「担当者を変えるなら、御社との付き合いはなくします」

 というようなことを言われるかもしれません。

 しかし、組織が正しく機能していれば、うまく引き継ぐことができるはずです。

「誰が担当しても同じパフォーマンスを出すことができる」という仕組みをつくることができるからです。

 そのためには、自分の仕事をマニュアルに落とし込んだり、人に伝えられるようにしておくことが求められます。
 仕組みの発想があれば、担当替えのリスクも回避できるのです。

(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)