ほめ方にもコツがある!?
心に刺さる言いかたとは

「よくやった」
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「みんなに、言わないと」

「よくやった」と言うのは評価です。評価をしても、ほめていることにはなりません。上司ができていることを部下ができた時は評価をします。上司ができていないことを部下ができた時はほめます。

「よくやった」は、「自分はできているけどね」と、一見、ほめているようでも見下した言い方です。

「すごい。みんなに言わないと」と言われたら、うれしいです。ここで「よくやった」は、いらないのです。

「こういうアイデアが、いいね」
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「こういうアイデアが、好き」

「こういうアイデアが、いいね」と言うと、「それ以外は、いまいち」ということになります。いまいちなのは、その人の好みでないだけです。「このアイデアはいまいちなんだよね」と言われると、次のアイデアを出したくなくなります。

 いいとか悪いとかは、よくわかりません。それよりも好き嫌いを明確にした方がいいのです。好みが一致した時にコラボレーションが生まれます。これはすべての仕事で共通です。相手の「好き」の範囲で自分の「好き」を考える形がベストなのです。

「お疲れさま」
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「今日のアレ、よかったですね」

 阪神タイガースの山崎憲晴二軍打撃コーチに、練習の後、「お疲れ」よりも「今日のアレよかったね」と声をかけたらと提案しました。

 タレントのルー大柴さんはまじめな方です。仕事が終わると、いつも今日の仕事を反省していました。私が「今日のアレはウケましたね」と言うと、ルーさんは「あれはどうかと思ったんだけど」と言いながらも、ほっとしてくれます。

 講演後、「今日のアレは刺さりました」と言われると、「1個でもいいことがあってよかった」と思います。

 レストランでは、「ごちそうさま」より「今日のアレおいしかった」と言う方が喜ばれます。

 1個ほめられると、全体をほめられるよりうれしいのです。

「頑張ったね」
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「やろうとしただけでも、凄い」

 難しいことにチャレンジして失敗した部下に、「頑張ったね」というのは慰めの言葉です。ただし、上から目線の言葉でもあります。

 フルマラソンに出る人は、フルマラソンをしようしただけでも凄いのです。

書影『好かれる人の言いかえ』(リベラル社)『好かれる人の言いかえ』(リベラル社)
中谷彰宏 著

 選挙に出た友達が落選した時に、私は「これだけ票が入って頑張ったよ」ではなく、「出るということが凄いでしょう」と言いました。

 結果よりもスタートとプロセスを評価することが大切なのです。

「部下の○○です」
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「私の、SNSの先生です」

 部下を紹介する時に、「新人でまだ何もできないので教えてあげてください」という言い方が通用するのは銀座のクラブだけです。クラブは新人に価値があります。教えてあげたいという気持ちになるからです。

 通常の仕事では、「私はできるけど」と自分を持ち上げているように聞こえて感じが悪くなります。部下を「私のSNSの先生です」と紹介すると、部下の株も上がるし、言った上司も「謙虚でいいな」と株が上がります。

 どんな人でも何かの先生です。ここで一番うれしいのは部下です。上司が自分をそんなふうに見ていたとわかるからです。