「これ、みんながわかるかな」という言葉は、少しずるさを感じます。本当はわかっていないのに、「私はわかるけどね」という意味合いになるからです。

 CMの企画でアニメキャラを使う時に、「僕は知らないけど、家に帰って子どもに聞いてみる」と言う人は信頼できます。「子どもに聞いたら、すごい有名らしいじゃん」と言える人は感じがいいのです。

 レストランで「このお料理の食べ方を教えてください」と言える男性はカッコいいです。同行者の女性が食べ方を知らなくてもカバーできます。「この人が知らないので教えてあげて」と言う男性は、「あなたが知らないんだろう」とバレているのです。

「もっと、いいのないかな」
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「なんか、ありそう」

 上司に「もっといいのないかな」と言われた瞬間、次に出すアイデアもいまいちと言われそうな予感がし始めます。絶対通ると思ったアイデアがボツになると、上司の狙いどころがわからなくなって迷うのです。

「もっといいのないかな」は、10点満点の0点です。「なんか、ありそう」は、1点は取っています。これで次、打っていこうという気持ちが湧いてきます。

 1人でアイデアを考える時も、「なんか、あるよね」で考えた方がいいのです。アイデアは常に1%の破片で湧いてきます。それをとっておけば次が出てきます。「なんか、ありそう」は、地面からのぞくタケノコの先を引き出していく言葉なのです。

角が立たない!
部下へのダメ出し言葉

「気が緩んでるね」
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「疲れてるね」

 部下がミスした時に、「この仕事向いてないんじゃないの」「やる気あるの」と、厳しい言い方はいくらでもあります。

「気が緩んでるね」は、叱り方としては最大限優しい言葉です。ただし、これは引き分けの言葉です。好かれる人は「疲れてるね」と言いかえます。その中には、「いつも頑張ってるね」というほめ言葉が含まれます。

 頑張っていれば誰でも疲れます。疲れて凡ミスをした時に、「お疲れでしょう」と言われると救われるのです。

「大丈夫?」
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「頑張ってるね」

 ピンチに陥っている部下に「大丈夫?」と聞いても、「大丈夫です」「大丈夫じゃないです」の2通りの返事しかありません。

 大切なのは、ピンチを乗り越える気持ちが湧くことです。「頑張ってるね」と言われると、「自分は頑張ってるのかな。もう少し頑張ろうかな」という気持ちになります。

 一番つらいのは、まわりが理解してくれないことです。「大丈夫?」「困ったことがあったら、いつでも言って」

 というのは、一見、心配しているようですが、実際は相手と距離を置いた言葉なのです。

 自分の頑張りをまわりが見てくれていると思った瞬間、元気が湧いてくるのです。