見えにくくなることで
幸福度が下がる
単に小さな文字が見えにくいだけなら、老化現象として粛々と受け入れるしかないだろう。ところが、老眼によって手元が見えないことが、自覚的幸福度の低下や、睡眠の質の悪化に繋がるというから穏やかではない。一体どういうことか?
「視界というわかりやすい要素が衰えるわけですから、自覚的幸福度が下がってしまうのは当然でしょう。人によっては就寝前の読書が満足にできなくなることも、ストレスに感じるかもしれません。一方の睡眠への影響は、見えにくいものを見ようとすることで起きる眼精疲労によるものです。眼精疲労は目の疲れだけでなく、頭痛や肩こりとしても表れるので、身体への負担は決して小さくありません」
こうなると、たかが老眼と侮ってはいられない。人生100年時代をできるだけ健やかに生きるためには、どのような対策をとるべきなのだろうか?
「老眼を修正する方法としては、老眼鏡や遠近両用眼鏡の使用か、あるいは遠近両用コンタクトレンズの使用、そして外科手術によって眼内レンズを挿入するという3つの選択肢があります。ただし、それぞれに一長一短あるのも事実です」
遠近両用眼鏡は遠方のピントと近場のピントの境目に鬱陶しさを感じる人が多い。その境目を感じにくい遠近両用コンタクトレンズにしても、見え方の質が落ちてあまり細かいものは見えない場合がある。
「また、眼内レンズも万全ではなく、見え方の質が下がるケースや、暗いところでの光が滲むハロー・グレアという症状が出ることがあります」
要するに、現代医学をもってしても老眼を完全に解決する術はまだ存在しないのだと、岩見先生は明言する。