減税で「賃金アップ」は見込めない…庶民に恩恵はなし?
日本国内の企業の99.7%は中小零細企業で、日本人の7割近くはこの中小零細企業で働いている。日本人の賃金が他国に比べて尋常ではないほど低いのは、この中小零細企業で働く7割の賃金が尋常ではないほど低いからだ。
では、なぜ低いのかというと、中小零細企業なので「労働組合」もないところがほとんどで、労働者が賃上げ交渉できないからだ。オーナー社長が自社の業績に照らし合わせて恣意的に従業員の賃金を設定している。
だから、中小零細企業は経営者によって賃金のバラツキがひどい。自分の給料をゼロにしても、従業員に高給を払っているような経営者もいれば、自分は会社の経費にしている高級外車を乗り回して、妻や息子に役員報酬を払いながら、従業員には最低賃金スレスレしか払わないような経営者もいる。
さて、こういう日本企業の99.7%の現実を踏まえて想像していただきたい。消費税減税をしたら、日本人の7割を占める中小零細企業の労働者たちの賃金が上がるだろうか。
上がるわけがない。従業員に還元する経営者もいるだろうが、ほとんどはドイツの企業と同じように減税の恩恵をポケットに入れるのではないか。私腹を肥やすということではなく「事業運転資金」に回してしまうのだ。
消費税減によって得たお金は言ってしまえば「あぶく銭」のようなものだ。下がった税金はいつか上がる。その日に備えて内部留保にしておこう。経営基盤の弱い中小零細企業の経営者ならばそういう考えに流れることを、責めるのは酷だろう。
このように消費税減税は「賃上げ」にはほとんど影響はない。むしろ従業員を最低賃金スレスレで働かせることや、補助金でどうにか食いつないでいるような「ゾンビ企業」を消費税減税によって「延命」をさせてしまう。結局、日本経済が30年先送りにしてきた「産業の新陳代謝」がまた停滞するので、国内経済はこれまで以上に冷え込む恐れもある。