「増税メガネ」から「やけくそ消費減税メガネ」に進化?
10月23日の所信表明演説で、「経済、経済、経済、経済」と連呼をした岸田文雄首相に対して、「消費税減税、消費税減税」と連呼する人々による包囲網が狭まってきている。
実は今、右派も左派も関係なく、「消費税を下げれば景気復活!」を掲げる政党や政治勢力が増えている。さながら「消費税減税ブーム」のようなありさまなのだ。
まず消費税減税といえば、れいわ新選組だろう。かねて「消費税ゼロ」を大きく掲げているので、「ようやく時代が我々に追いついたか」と言わんばかりに勢いがある。
日本共産党も、生活困窮者のために「消費税5%減税」を主張している。国民民主党も経済対策として消費税率は5%まで引き下げることを盛り込んだ。日本維新の会もややトーンダウンしているが、「消費税8%減税」を盛り込んでいる。
また、作家の百田尚樹氏やジャーナリストの有本香氏が国政進出を目指して設立した政治団体「日本保守党」も、「減税日本」を率いる河村たかし名古屋市長を共同代表に迎えたこともあって、「消費税減税」を掲げている。
さらに、岸田首相の「身内」からも声があがる。10月上旬、自民の若手議員らでつくる「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が所得税の減税だけではなく、消費税率の時限的な5%への引き下げを提言している。
政治信条やイデオロギーがバラバラの人々が「消費税減税」という旗印のもとに集結していると、ヒーローが集結する映画「アベンジャーズ」を見ているようで、胸に熱いものが込み上げる方も少なくないだろう。政治家なんて自己保身ばかりだと思っていたけれど、消費税を下げるなんて庶民の苦しみがよくわかっているじゃないか――と。
しかし、そんないい気分を台無しにする「KYな一言」を岸田首相が国会答弁で述べてしまった。
「社会保障の財源として位置づけられており、税率引き下げは考えていません」
この言葉に庶民の怒りが爆発。マスコミ各社の世論調査では、支持率が政権発足以来最低になってしまったという。
これを受けて、筆者は岸田首相が「やけくそ」になって、所得税減税だけにおさまらず、消費税減税まで踏み切る可能性があるのではないかと思っている。「増税メガネ」ならぬ「やけくそ消費減税メガネ」へ進化してしまうのだ。