最終的には、心揺さぶるものを収集する

書影『SECOND BRAIN(セカンドブレイン) 時間に追われない「知的生産術」』(東洋経済新報社)『SECOND BRAIN(セカンドブレイン) 時間に追われない「知的生産術」』(東洋経済新報社)
ティアゴ・フォーテ(Tiago Forte) 著

 ここまでの判断基準の中でもっとも大事な基準を1つに絞るとすると、「心に響くものをキープする」に尽きます。

 理由は、チェックリストの分析にもとづいて「保存するかどうか」を決めるのは、それなりに手間とストレスがかかるからです。

 知的な作業が面倒になってしまえば、いずれやらなくなるのは言うまでもありません。読むことを習慣づける秘訣は、「手軽に楽しく」がポイントです。

 ハッと息をのんだ、心臓がドキッとした、時間の流れがわずかに遅くなり、まわりの世界が消えた。これらが“保存”の合図です。

 神経科学の研究から、“感情は合理的な思考を邪魔するのではなく、むしろ整理する”ことが判明しています。

『行動を変えるデザイン』という本によると……

 公平でない組み合わせで組まれた4つのトランプのデッキを使った有名な実験がある。あるデッキはほかのデッキに勝てるようにしくまれており、残りのデッキはほかのデッキに負けるようにしくまれていた。ゲームを始めたときには、デッキが不公平にしくまれていることは被験者たちに知らされていなかった。それにもかかわらず、ゲームが進むにしたがって、負けやすいデッキを使おうとした被験者の体に物理的なストレス反応が現れるようになった。ストレスは自動的に生じる反応なので、被験者が意識的に何かおかしいと気づくずっと前に、直感が異変に気づいていたことになる。

 著者はこう結論しています。「わたしたちが気づいていないときも、直感はつねに反応しながら学習しているということだ」

 直感の声を無視し続けていると、声は徐々に小さくなり、いずれ聞こえなくなります。まわりで何が起こっているのかが聞こえず、鈍感になるということですね。

 逆に耳を澄ましていれば、内なる声は大きくなり、何を選択すべきか、どのチャンスをつかむべきか、害となる相手や状況はどんなときかということについて、どんどん勘が鋭くなります。

 心に響くことのほかに、メモとして保存しておくと役立つ場合が多いものが2つあります。

 ウェブサイトのアドレスや、コンテンツのタイトル、書籍の著者、出版社、出版日など、ソースに関する基本情報を記録しておくといいでしょう。

▼翻訳者プロフィール

春川由香(はるかわ・ゆか)
翻訳家
英国ニューカッスル大学英語教育法修士課程修了。ノンフィクション、サスペンス小説等の翻訳を手がける。『MONEY 30歳で150億稼いだ私の思考法』など訳書多数。