「カリスマ頼みの会社が必ず失敗する」
そう語るのは、これまで4000社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『とにかく仕組み化』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに、仕組み化のメリットを説いた。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/種岡 健)
「理念なき会社」とは
この世には、「企業理念がない組織」というのがあります。
個人が「自然の状態」になってしまうのと同じで、組織も自然の状態になってしまうことがあるのです。
それは、「お金になるから起業する」という人がいるからです。
社会に対して、何をやりたいかはわからない。ただ、お金はたくさんほしい。
そういう組織です。社員に向けても、
「利益が出れば何をしてもいい」
「お金儲けが最大の目的だ」
ということしか伝えられない。
こういう組織でも、一時的にうまくいってしまいます。
トップにカリスマ性があり、その求心力によって、お金儲けへエネルギーが向いてしまうからです。
しかし、必ずどこかでつまずきます。
社会に対して果たすべき目的がないと、会社は続かないようになっています。
もちろん、利益は大事です。
しかし、それは、あくまで企業理念を実現する上で、組織を存続させるために必要なものです。
ただ、利益を追いかけ続けるのは、魂の抜けたゾンビのような状態です。
どこに向かえばいいか、ゴールを見失い、たださまよっているようなものなのです。
理念があるから「一貫性」が生まれる
私たちの会社であれば、「1日でも早く識学を広める」という企業理念に基づいています。
その理念が、経営者の「判断軸」になります。
企業理念に近づくことは、よい。
企業理念から遠ざかることは、ダメ。
その一貫性を生み出します。
私たちが福島ファイヤーボンズというバスケットボールチームをグループ会社で運営していることも、M&Aの仲介事業に参入したことも、「1日でも早く識学を広める」という理念に基づいた意思決定です。
この軸がなければ、「利益を求めて何をやってもいい集団」になり果ててしまいます。
モラルがなくなり、
「どんなに反社会的でも、売れればいい。儲かればいい」
となってしまう企業は、ここがブレているのです。
理念は「現場の判断」までつながっている
たとえば、私たちの会社では、現時点で3500社以上のクライアントがいます。
そうすると、そのクライアント数を目当てに、次のような依頼がきます。
「その3500社に、ウチの法人向けの新サービスを販売しませんか?
契約が成立すれば、売上の20%を御社に還元します」
このような依頼です。
これを受けると、たしかに一定の売上にはつながります。
しかし、企業理念と照らし合わせると、
「識学を1日でも早く世に広める」
という、本来の会社の目的に近づくわけではありません。
だから、「それはやりません」という判断が下せます。
どんな会社を目指すのか、どんな組織になりたいのかは、そうした判断につながってくるのです。
その責任を、人の上に立つ人は求められます。
そして、現場の社員やスタッフは、そこに従わなくてはいけません。
後になってから、「だから、あのとき、会社は新サービスを導入しなかったのか」と、遅れて腹落ちするはずです。
「トップダウンでいい」その理由とは?
企業理念に反発する理由のひとつに、「トップダウンはよくない」という勘違いがあります。
「あなたの会社は、トップダウンか、ボトムアップか」
という質問がよく聞かれます。
しかし、この質問自体が根本的に間違っています。
意思決定は、上から下におこなわれます。
ただし、下から上に情報をあげることは正しい。
これがマネジメントの真理です。要するに、トップダウンの側面もボトムアップの側面もあるということです。
1枚の紙に表裏があるように、会話には話すことと聞くことがあるように、トップダウンとボトムアップは、つねに表裏一体です。
ただし、ボトムアップによって集まった情報に基づいて、意思決定をするのは、人の上に立つ人です。
そして、その決定は絶対です。
なぜなら、責任を負っているからです。
責任がない人が、決定したり、判断したりすることは、物理的にできないのです。
(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)