「部下や後輩に寄り添いすぎて疲弊している。もはや『寄り添い疲れ』だ!」
そう語るのは、これまで3500社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『とにかく仕組み化』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに、仕組み化のメリットを説いた。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、組織マネジメントのプロが教える“驚きの解決法”を解説する。(構成/種岡 健)
いいリーダーの言葉は、
「時間差」で遅れて効いてくる
あなたが求めているのは、寄り添ってくれる「いい人」「いいリーダー」「いい上司」でしょうか?
たしかに、そういう存在は優しくて理想的に感じるでしょう。
しかし、いま確実に会社組織で増えているのは、「寄り添いすぎて疲弊する管理職」なのです。
考えてもみてください。
若い頃には、社会の先輩からのアドバイスを聞いて、
「耳が痛い」
「正論すぎる」
と感じたことがあると思います。
それらは、悪いアドバイスだったのでしょうか?
おそらく違うはずです。
後になって、あなた自身が成長したり、出世したり、人の上に立ったときに、
「あの人が言っていた厳しいアドバイスは、こういうことが言いたかったのか!」
と、遅れて理解がやってくるはずです。
それなのに若い頃は、誰しもが会社のルールに反発するものです。
なぜなら、そのときは、「仕組み化」の発想がないからです。
「仕組み」の大事さに気づく瞬間
これは、創業して3年が経つ、ある会社の話です。
そこでの営業は、社長1人が担っていました。
自分の営業力に自信があり、徐々に会社を拡大していったそうです。
それを良かれと思ってやっている一方で、社員の仕事量が増え、営業で案件を取ってくることが「歓迎されていない」という雰囲気を、社長は感じはじめます。
そうです。営業の能力だけでは立ちゆかず、組織マネジメントの重要性を痛感する瞬間です。
そこでやるべきことは、社長自身の営業活動をいったん止め、「評価制度」をつくり、メンバーに「何を求めているか」「どうすれば評価されるか」を明確にすることです。
ここで立ち止まって仕組みづくりに着手できるかどうかで、その会社の行く末は決まります。
「寄り添い疲れ」からの解放
どんなに圧倒的な結果を出してきた優秀な人であっても、
「嫌われることが不安で怖い」
と言います。
たとえば、会社の仕組みを変えるときに、社員から、
「またルールが変わったのか」
と思われることを恐れます。
いまの世の中の会社組織では、上司と部下の距離が近すぎることで、相手の顔色をうかがうようになってしまい、嫌われることを恐れてしまうのです。
お互いの心を軽くするために、行動を素早くするために、
「部下とは迷わず距離をとれ」
という方法は、もっとも効果を発揮します。
それにより、冒頭の「寄り添い疲れ」からも解放されて、目の前の仕事に全員が集中することができます。
さて、大事なポイントは2つです。
①「いいリーダーの言葉は、『時間差』で遅れて効いてくる」
②「部下とは迷わず距離をとれ」
ぜひ、あらためて自分に向けて、この2つを問いかけてみてください。
もし、若い頃に「寄り添ってくれない!」という不満をエネルギーに変えて、起業したり、転職したりした場合も、結局は同じことに気づくはずです。
「自分の理想のチームをつくろう」「全員に寄り添って優しくしよう」などと最初は思うでしょう。
その後、仕事がうまくいったとして、人を増やすタイミングがおとずれます。
そこに入ってくる若者が、昔のあなたと同じようにルールに反発したとき、
「あの頃の自分は、こういう姿だったのか……」
と、その未熟さに気づくはずです。
いいリーダーの言葉は、時間差で遅れて効いてくる。
言われたことを忠実に一生懸命に取り組んでくれる「組織」のありがたみが、痛いほどわかるはずです。
(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)