モンゴルの人々は
どうしてウランバートルに集まるの?

「VIVANT」で話題!モンゴルの首都近郊に誕生する大都市がモデルにした日本の都市は?ウランバートル市街地の様子

 その理由のひとつは、モンゴルの厳しい自然環境。夏は40℃近くを記録することもありながら、冬はマイナス20℃を下回る日も珍しくなく、北欧の諸都市やカナダのオタワ等を抑えて“世界で最も寒い”かつ“世界で最も寒暖差の激しい”首都として知られています。

 温度差や冬の寒さの厳しさがあり、現時点では本当に何もない広大な草原となっている土地を開発していくためには、暖房システムや電気、水道、道路などを含む多くの都市インフラの整備が必要になりますが、そのために必要なコストを賄う資金や労働力が人口の少ないモンゴルではなかなか補いきれません。

 結果として、近代的な生活を志向する人々は生活基盤の揃ったウランバートルに身を寄せることとなり、仕事や市場などの経済活動の拠点もそこに集まるので、都市間の経済やインフラ整備の格差はさらに広がっていく……という悪循環に陥っています。

「VIVANT」で話題!モンゴルの首都近郊に誕生する大都市がモデルにした日本の都市は?首都郊外には殆ど何もない広大な草原が

 他方でウランバートルにも限界はあり、急激に進む一極集中に都市の整備が追い付いていないので、交通渋滞や大気汚染といった都市の課題が深刻化していきます。

 そんな状況に危機感を覚えたモンゴル政府は、「人々の集まるウランバートルの周辺に人々や建物を分散させるために、衛星都市となる新都市を作ろう!」と計画し、長い期間をかけて調査を実施。ウランバートルの南に位置するトゥブ県のゾーンモド市という地域の近くに「新ゾーンモド市(New Zuunmod City)」という大規模な新都市を建設する構想が立てられ、2022年4月にはモンゴル国家大会議(国会)が「新ゾーンモド開発マスタープラン」を承認しました。

 このマスタープランでは、新ゾーンモド地域への大学や行政関連施設の移転、物流拠点、商業・産業関連施設、自由経済地域(経済特区)、居住地区の整備などが計画されており、その面積はなんと3万ha以上! 東京23区の約半分にも及ぶ広大さを誇ります。

 2023年には開発計画を進める国家委員会の設立も決定されましたが、いざ開発計画に着手しようとしても、あまりに大きな都市開発のため、どの省庁・機関が何をすればいいのか(できるのか)、といった役割分担や法制度はまだまだ曖昧で、計画を実行に移そうにも移せない状態。

 また、モンゴルではこれまでウランバートルを中心とした開発をしてきたので、同国の行政職員にウランバートル以外の場所に新都市を大規模に開発する経験がこれまでなく、「夢の計画を描いたけれど、どうやって進めればいいんだろう……」と、実行段階で問題が認識され始めています。

「VIVANT」で話題!モンゴルの首都近郊に誕生する大都市がモデルにした日本の都市は?過去に提案された新ゾーンモド市での土地利用計画イメージ  出所:JICA報告書「モンゴル国 新ウランバートル国際空港周辺都市開発にかかる情報収集・確認調査ファイナルレポート(jica.go.jp)