役職定年による給料減を挽回できる「ライセンス認定制度」を、大和証券が導入から8年で廃止していたことがダイヤモンド編集部の取材で判明した。同制度は、経済同友会の政策提言資料でも度々評価されてきた。特集『どの世代が損をしたか?氷河期部長&課長の憂鬱 出世・給料・役職定年』の#17では、廃止されたライセンス認定制度が抱えていた問題点を分析する。さらにこの廃止に伴い、これから役職定年を迎える氷河期世代は、自己研鑽よりもパフォーマンスで処遇が決まることも分かった。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
経済同友会も評価したライセンス認定制度
大和がこっそり廃止した理由と変更点とは
金融業界における中途採用は、依然として売り手市場が続いている。
転職サービス「doda(デューダ)」が毎月公表している転職求人倍率レポートによれば、2023年10月の転職市場における「専門職(コンサル・金融)」の求人倍率は6.59倍だ。スキルが高い人材ほど争奪戦は熾烈で、金融業界もその渦中にある。
このような厳しい環境に危機意識を持って人事制度改革を進めてきたのが、証券業界2位の大和証券だ。15年以降に同社が拡充してきた下表の人事制度を見てみよう。
最大の特徴は、ハイスキル人材の獲得や育成を目的とした制度拡充が目立つことだ。
高度人材を育成する制度の典型的な例は、19年10月に大和が新設した「デジタルITマスター認定制度」である。この制度では、各部門から社内公募で素養のある人材を選抜し、デジタルスキルを習得させるプログラムを用意している。
また、高いスキルを求められるのはベテラン層も例外ではない。同社は15年4月に、45歳以上の社員のスキル向上を目的とした「ライセンス認定制度」を導入している。
この制度では、自己研鑽に積極的に取り組むベテラン社員の給料を優遇してきた。経済同友会の政策提言資料でも、ベテラン層の活躍を支える好事例として度々紹介されている。
ところが今年、大和が8年続けたライセンス認定制度をこっそり廃止していたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。「給与水準の引き上げ及びシニア社員向け施策の見直しについて」という23年3月31日のリリースでは、シニア社員に対する処遇・施策の見直しやライセンス認定制度について書かれているが、廃止には触れられていない。
なぜ大和の制度は、こっそりと廃止されたのか。そこには他の大企業にも共通するシニア再教育の矛盾があった。さらに、役職定年で2~3割下がる給料は今後どうなるのか?シニアもパフォーマンスだけで評価されるのか?40~50代の氷河期世代が割を食うのか?次ページで詳細を説明しよう。