決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏#10Photo by Satoru Okada,Diamond

上場企業のPBR(株価純資産倍率)1倍割れが注目される中、大手証券2社が1倍を大きく割り込んでいる。しかも、泣く子も黙る業界最大手が2番手を下回っている状況だ。特集『決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏』(全27回)の#10では、大手2社の資本の配分や経営方針の違い、そして米系投資銀行との圧倒的な力の差を解説する。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

「週刊ダイヤモンド」2023年6月24日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

「じくじたる思い」と経営トップ
野村が大和を下回る“逆転現象”も

「じくじたる思いだ」――。大和証券グループ本社(以下、大和)の中田誠司社長は5月31日に開かれた経営戦略説明会で、自社のPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っていることに触れ、こう述べた。

 東京証券取引所の専門家の会議が、株式時価総額が純資産額を下回り、PBRが1倍割れとなっている企業に対し、改善策を公表するよう求めたことが注目を集めている。5月以降の日経平均株価の高騰の要因ともいわれている。

 だが、ニッポンの株式市場の水先案内人であるはずの証券会社では業界2位の大和だけでなく、圧倒的な首位に君臨する野村ホールディングス(以下、野村)でさえ、PBRが1倍を割り込んでいるのが実態だ。しかも、大和のPBRが0.6倍台なのに対し、首位の野村は0.4倍台とさらに低い。

 なぜ、日本を代表する大手証券2社がPBR1倍割れを喫し、かつ最大手の野村が2番手の大和を下回る事態となっているのか。米国の大手投資銀行とも比較して、その要因を探ってみよう。