円安効果で増益も
中国事業に暗雲

 一方で、好調な決算に沸いてばかりいられない懸念材料も浮き彫りとなっている。

 それは、各社ともに世界最大の市場として大きな収益源に位置付けていた中国事業が変調をきたしていることだ

 三菱自は、この上期決算発表直前に中国での生産撤退を決断し、20万台の生産能力を持つ広州汽車集団との合弁事業から手を引くことを発表した。三菱自は、日本車メーカーの中でもいち早く(ふそうトラックで)中国現地で合弁生産を実現したが、昨今の中国での販売低迷を受けて3月から新車販売を停止していた。結果的に、販売回復が見込めず再開を断念し、広汽三菱からの出資引き揚げによる特別損失を今期に計上することになった。

 中国事業の苦境は三菱自に限ったことではなく、トヨタなど各社ともに厳しい事態に陥っている。中国では政府によるNEV(新エネルギー車。BEV・PHEV・FCEVの総称)政策の影響から地場メーカーの存在感が強まっており、日本車メーカーは総じて苦戦を強いられている。

 日産の社長就任直前まで中国事業を現地で統括していた内田誠社長は「中国は新興メーカーの参入も多く、日産にとって厳しい環境が続いている。値引きが厳しく利益を出せる水準にない。中国事業を再び成長軌道に乗せるべく事業構造計画を立て直す」と、中国事業の立て直しを最大課題に挙げた。

 ホンダも北米事業の収益増と円安により営業最高益を予想したものの、中国などアジアの販売台数見通しが7%減と従来計画から下振れすることなどから、「中国の合弁工場の構造改革で固定費を抑制する方向にかじを切る」(青山真二副社長)と中国の課題に言及した。

 最強と称される業績予想を打ち出したトヨタといえども、中国事業では苦戦を強いられている。トヨタと広汽集団の合弁「広汽トヨタ」は7月に約1000人を解雇した。「中国は厳しい販売環境にあり、トヨタとしても足元のシェアを維持していく計画だ」(宮崎CFO)と、中国市場でのシェア維持がやっとというほどだ。

 マツダの毛籠勝弘社長は「中国現地の販売は予想以上に厳しいが、反転攻勢へ」と述べるものの、現地の合弁企業を統合するなどの動きがみられ、戦線は縮小している。