直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身やおすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
文学界の賞レース
小説を書いて直木賞を受賞するのは、作家としての最終到達地点――世間にはそんなイメージがあるかもしれませんが、実は文学界では賞レースに終わりはありません。
直木賞を受賞した後も、中央公論新人賞に柴田錬三郎賞、司馬遼太郎賞や吉川英治文学賞といった賞の選考が待っていて、それらを受賞すると菊池寛賞や紫綬褒章、朝日賞といった賞の数々が視野に入ります。
司馬遼太郎先生などは文化勲章まで受賞されていますから、一流作家はキャリアの晩年まで賞と無縁ではいられないわけです。
大河ドラマの原作者
になるということ
私にとって最終到達地点があるとすれば、NHK大河ドラマの原作者になることです。
なにしろ私は3~4歳の頃に渡辺謙さん主演の「独眼竜政宗」を見て以来、筋金入りの大河ドラマファン。
かつてはDVDを借りたり買ったりして、過去の作品も遡って鑑賞しましたし、現在も新作を追い続けています。
大河ドラマは狭き門
大河ドラマの原作者になれる歴史小説家は、ひと握り中のひと握り。しかも、今はオリジナル脚本が大河ドラマを席巻していて、小説家の原作が採用されるケースはめっきり少なくなっています。
感覚的には、高卒の野球選手がメジャーリーグのドラフトでいきなり1位指名されるくらいの狭き門です。
いつか大河ドラマのオープニングテーマをバックに、「今村翔吾」のテロップを目にしたい。そんな日を夢に見つつ、今は録りためた「どうする家康」を視聴しています。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。