こうして学会員たちが期待する、創価大学出身の直弟子2人の後継者の芽が潰えた。他にも注目された人物はいたが、正木氏や往時の弓谷氏を思わせるスター幹部は出ていない。2015年、学会の安保法制容認を機に、学会に疑問を持ち退会したという学会員は言う。
「原田会長の就任以降、かつての正木氏、弓谷氏を思わせるスター幹部が育つ土壌がなくなった」
この元学会員によると、第6代・原田氏の会長就任以降、学会員たちの間では「最も信心の濃い町」と呼ばれる東京都新宿区信濃町の学会総本部による中央集権制が強まり、全国の各地域や創価大学内における「遠い将来の会長候補」「プリンス」と呼ばれる人がいなくなったという。
小さな宗教サークルから
宗教を提供する巨大NPOへ
では、直系の弟子に後継者がいないのなら実子はどうか。池田氏には3人の男子がいる。俗にC1(「しーわん」と発音、チャイルド1/長男の意味)と呼ばれる第一子の博正氏、早逝した次男(C2)の城久氏、三男の尊弘氏(C3)の3人だ。長男・博正氏、三男・尊弘氏共に、学会や創価学園の要職に就いている。
もっとも、彼ら池田氏の実子2人が、池田氏の後継として学会の指導者になることはないだろう。池田氏自身が世襲を嫌っていたからだ。そもそも学会内部ですら、「池田氏の実子を後継者に」という空気感は皆無だ。
もし池田氏の実子を後継者に据えた場合、「それこそ池田先生のお心に反する」と学会に反旗を翻す者もいるだろう。それに池田氏の直弟子養成機関であるはずの創価大学出身者ですら、近年では人材は多くないと、上は副会長職にある幹部クラス、現場の末端役職者に至るまで、話題に上る始末だ。もはや創価大学出身者が「ポスト池田」として、その名が挙がる可能性は極めて低いだろう。
人が集まるところ、必ず争いがある。ましてや人事となるとなおさらだ。直弟子も実子も無理となれば、消去法的に浮かび上がってくるのは、結局のところ、やはり池田大作氏だ。
かつて法華経を信奉する小さな宗教サークルだった学会も、拡大路線が功を奏し、いつしか他に例を見ない「宗教というサービスと場」を提供する巨大なNPO(非営利団体)の様相を見せるに至っている。