「数字」で自分を把握しよう

 さて、タツヤさんは、頭のなかでは「このままでは良くない」と理解しているにもかかわらず、感情では「会いたくない」と感じてしまっています。
 このようなもどかしさは、まさにメンヘラの特徴です

 まずは、「頭んなかがメンヘラになっている」という気づきをしてもらい、「ハラ落ちのためのステップ」を実践してもらいました。

 ステップ1は、「どうなりたいかを言語化する」というものです。
「人間関係をリセットしない自分になりたい」という目標でスムーズに決まりました。

 ステップ2は、「数値化によって問題の原因を探る」というものです。
 何がキッカケになっているのかを、自分の行動の「数字」によって見つける必要があります。

 タツヤさんには、これまでの人生を振り返って、「リセットした回数」を数えてもらいました。
 最初は、中学生の頃でしたが、高校、大学、大学院、前の職場、今の職場(その中で2回)と、7回以上もリセットをしていました
 それら1つ1つを思い出し、リセットが起こるまでの行動を思い出すことにしました。

いつから会いたくないと感じるようになったか」
「会いたくないと感じたときの一日のスケジュールに変化はあったか」
「他にも、お金の使い方や趣味の時間に変化があったか」
一人でいる時間はどれくらいなのか」……

 そうやって数字を追っていくうち、「会いたくないな」と感じるようになるのが、「物理的な移動を意識したとき」に近くなることがぼんやりしてきました。

なぜ、人間関係をリセットしていたのか?

 たとえば、中学卒業のときも、受験で合格が決まったときから、「会いたくない」と感じていたそうです。
 会社でも、部署異動の当日ではなく、部署異動が通達されたときに、「関係を断ちたい」という気持ちが出てきたと言います。

「この人たちと離れなければいけないんだ」と感じたときに、恐れが生じ、自分を守ろうとしてしまっていたのです。

 他に人間関係での悩みを聞くと、

「たしか小学校の頃ですかね。僕の親友が、他のクラスの子たちと仲良く遊んでいるのを見かけたとき、どうしても許せなかったんです。その晩もイライラして眠れなかったほどです」

 と、嫉妬する気持ちを話してくれました。

 同様の気持ちは、大学時代の友達に対しても感じました。
 当時の友達がSNSで結婚を報告して幸せそうにしているのを見かけると、自分が傷つけられた気がしたそうです。

 どうやら、自分が傷つくくらいなら、自分から関係を断ったほうがマシだと思ってしまうようでした。
 自分の心を守るために、人間関係をリセットするクセが機能していたのです。