クマ被害続出の日本列島に根強く残る「かわいいクマさん幻想」の病理クマが人にあだなす獣になり得るということを、想像しにくい感性が確立されてしまっているのではないか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

クマによる人身被害が相次いでいる。被害人数の過去最多は2020年度の158人(ツキノワグマ・ヒグマ)だったが、今年は10月末暫定値にかかわらず180人(2023年11月1日時点)と、これを大幅に更新している。すでに5人の死亡者が出ている由々しき事態で、各自治体は対応策のうちの一つの選択肢としてクマの駆除を行っている。しかし、それに対して「殺す必要があるのか」「適切な対処でない」という批判が持ち上がっており、自治体窓口には嵐のようなクレームが寄せられ、業務が滞ったりしているそうである。動物愛護の精神に我々はどのように向き合うべきか。クマの駆除に関する考え方を通して、世相が変わりゆく中、2023年の今改めて考えてみたい。(フリーライター 武藤弘樹)

クマ被害が過去最多に
ドングリの不作が主な原因?

 今年クマが人の生活圏内に多く出没している原因については、主にクマの食料となるドングリやヤマブドウなどの不作が関係していると見られる。他の原因として専門家は、クマの生息域の変化や、生息数の増加(狩猟をする人が減っていることが関係しているとの説も)といった可能性を指摘している。

 また、クマ被害の増加とメガソーラー(大規模太陽光発電システム)の関連性を論じる風説や、森林伐採によってクマのもともとの住処が奪われているのではないかといった風説があり、それに対して「根拠のない情報を安易に鵜呑みにしないように」といった注意喚起も行われている。

 様々な情報が錯綜するのは現代の世の常だが、メガソーラーに関していえば、ゴルフ場跡地などのもともと開発されていた場所にソーラーパネルを敷き詰めることが多いそうで(ソーラーパネル設置のために改めて造成工事をすると莫大なコストがかかるため、行わない)、クマ被害を増加させている主要因とは言えなさそうである。

 ともあれ、情報の精査に神経を使いたい局面である。