現代人がクマを愛したい理由
やむなく駆除する現場の理由
クマの駆除に反対する意見には、頷けなくはない面もある。まず、クマはルックスがいい。かわいく、よく二足歩行をするし、子グマを伴って目撃されたりするので、人間にとって擬人化して捉えられやすい。
また、クマのぬいぐるみやキャラクターも非常に多く、かわいいクマのキャラなんぞは日常のそこかしこで目にすることができる。テディベアやくまのプーさん(ディズニー)は世界的に愛されるクマたちであり、いつも蜂蜜を舐めようと平和そうにポワンと佇んでいるプーさんが、クマとして実はひとなぎで人間を殺傷する能力を持っていることは、誰しもが忘れている。
というか、クマのプーさんというキャラを見るときにそのようなことを想定するのは、無粋かあまのじゃくである。
そうした積み重ねがあるから、クマが時として人にあだなす獣になり得るということを、想像しにくい感性が確立されてしまっている。鳥獣保護法に則った形で駆除が行われようと、「駆除、すなわち殺すことは許されないのではないか」と自ずと感じられてしまうわけである。
そこで、「殺す以外の解決法をなんとか見出してほしい」というのが駆除反対派の主張である。
一方、駆除を敢行する現場は、それを承知の上でやむなく駆除を行っている状況である。今年被害にあった人の数が最も多い秋田県では、すでにおよそ6年前に「熊の殺処分について」と題した声明を出し、殺処分に反対する県民の声に回答する形でその考えを示している。クマの駆除を行う自治体側の苦悩が端的にまとまっているので、箇条書きで紹介したい。
・人身被害が住宅地含む県内どこにいても起こりうるので県民の不安は高まっている。
・種々の施策は実施済。また、狩猟者に自粛要請を行っていたが、捕獲数上限を定めた上で自粛要請を解除した。県民の命の安全をふまえてやむを得ない措置。
・動物の命の大切さは重々理解している。
・ツキノワグマが人の生活圏に侵入せず、本来の生息域で暮らしていけることがそもそも大事なので、各施策に取り組んでいく所存。
参考)秋田県 県民の声 熊の殺処分について
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/contents/63987