古川 僕は2000年代の前半ぐらいからホームページで情報発信を始めました。ですが約20年間は、こうした活動でお金を稼ぐことができなかったんです。

それがこの数年、ウェブでの情報発信でちゃんとお金をいただけるようになりました。ここに至るまでには、3つの段階があったと考えています。

最初のころは、インターネット上の発信では収入をまったく得られないのが主流でした。次の段階では、たとえばYouTubeに広告をつけて稼ぐやり方が成立するように。

そして今、クリエイターが顧客から直接課金してもらい、収入が得られるという3つ目の段階になってきています。

このようになってきたのは、システムや技術の進歩よりも、文化の変化による影響のほうが大きい気がしますね。

──インターネットを取り巻く文化は、どのように変化したのでしょうか。

古川 昔はSNSに広告を貼るだけでめちゃくちゃ叩かれたんですよ。

広告はたとえ1万PV稼いでも、収入はせいぜい2000〜3000円。200万円の収入を得ようと思ったら、1000万PVをコンスタントに出せるメディアをつくる必要があります。

となると、どうしても刺激の強い内容や情報の出し方でPVを稼ぎ、コストはギリギリまで下げる......というやり方にならざるを得ません。

専門的な話やニッチな情報は、PVが稼げないしコストもかかるため、敬遠されるようになります。海外のブログに書かれた文章をきちんと検証することなく翻訳しただけの記事などが、あふれかえるようになりました。

でも今は、同じ200万円を稼ぐ方法として、ニッチな情報を2000人に1000円で買ってもらうというやり方が成立するようになってきています。

これは、“慣れ”の影響が大きいと思うんですね。

40代以上の人から見ると「クリエイター」とは、画家やミュージシャンのようなイメージがあります。ところが、10代にとって「クリエイター」といえば、ネットで何か発信している人全般を指します。

生まれたときからインターネットに触れ、ウェブ広告や課金などに慣れている世代にとっては、ウェブ上の情報や作品などに対してお金を払うことは、全然苦にならないんです。

SNSにはそれぞれの住人属性がある

──後藤さんは日本経済新聞社(以下、日経)に勤めていた2020年4月にTwitterを始め、37万人のフォロワーを得ていました。でも、2022年3月に退職されたときにこのアカウントは閉じられて。同年4月に個人のアカウントを始め、現在(2022年10月25日)44.7万人のフォロワーがいます。